軽趣向好作選130

 早いものでもう12月ですね。今年はちょっと色々とあって疲れる一年だったような気がします。最後くらいは落ち着いて過ごしたいものです。
 今日は軽趣向好作選です。良く練られた2作品を紹介します。
20241201amauchi
▲18桂△同と▲29香△28銀
▲同香△同と▲18桂△同と
▲29香△28銀▲同香△同と
▲18桂△同と▲29香△28金
▲15銀△同馬▲27銀△17玉
▲26銀△同玉▲28香△同と
▲17金まで25手。
 桂香を金駒に変える持駒変換ですが、最初の銀合が「一番安い駒」というものなのに対して、2回目の銀合は「27銀、17玉、36銀のときに37歩で逃れるため」、更に3回目の金合は「15銀、同馬、27銀、17玉、36銀のときに27香合で逃れるため」と都度意味づけが違っているのが普通の持駒変換と違うところ。持駒の微妙な違いを持駒変換に活かすのは珍しく、良く見つけたものだなと思います。無理のない収束も含めて完成度の高い好作ですね。
20241201nakada
▲16金△35玉▲36龍△同玉
▲58角△47桂▲同角△同銀
▲同銀引△35玉▲24銀打△34玉
▲46桂△同歩▲25金△同玉
▲36銀△34玉▲45銀△25玉
▲27飛△16玉▲26飛△同桂
▲27銀△25玉▲26銀上△16玉
▲25銀△同玉▲36銀△16玉
▲27銀△25玉▲16銀△同玉
▲27角△25玉▲37桂△34玉
▲16角まで41手。
 16金に同玉は17龍、25玉、14銀以下。35玉に36龍と捨てて58角以下で銀桂を手にし、24銀打して敵玉を狭くした後が主題。まずは46桂と捨てて角筋を通し、25金~36銀~45銀とするのがちょっと意表の手段。同金は同角で早いので25玉ですが、57飛の横効きが通ったので27飛で継続することができます。前に効く合駒は同飛~36銀、桂合は同飛~37桂で早詰で合駒せずに16玉と逃げるのが最善ですが、26飛から38銀を活用して桂を入手。この桂をトドメに使うため、25銀と消去して45銀を再活用するのが巧い。16玉を作って27角~37桂とし、最後は気持ちの良い透かし詰です。
 逆算かな、という気がしますが、捨てる飛を活かす序を含めて40手を超える手数を小気味よい駒繰りで統一できたのはお手柄。センスの光る一品です。

軽趣向好作選129

来週土曜日は詰とうほくです。久しぶりの和室開催となります。寒い日になりそうですので、皆様防寒対策を取ってきましょう。


本日は軽趣向好作選です。
20241117kaneko
▲77銀上△同飛生▲87銀△同飛生
▲67銀△同飛生▲68桂△同飛生
▲58角△同飛生▲68桂△同飛生
▲66と△同飛生▲68桂△同飛生
▲46飛△66桂▲同飛△同飛生
▲68桂△同飛成▲85銀△66玉
▲56と まで25手。
 構図からして、49飛を活用するために右側の駒を捨てるのかな、という形に見えますが、まずは86銀が浮いているので、それを取られないよう、77銀上~87銀として飛を質に入れます。先ほどの狙いから、66と~65角としたくなるのですが、66とを同玉と取られると手が続きません。そこで58銀を消してから58角と下から捨てる手順が正解になります。これで飛筋が通ったので66と~68桂とすれば46飛が実現します。
 これで歩を入手しました。なんとここまで来て、今まで文字通り縦横無尽に攻め駒を取った飛は全て不成であったことがわかります。66桂合で打歩詰ですが、これを取ることで収束します。最後を成限定にしているのも気が効いています。
 20手台ですが8回の連続飛生を含む9回の飛生出現で、連続飛生は今でも本作が最長記録のようです。46飛の局面まで、飛でも龍でも成立している手順になっていなくてはいけないので、これはなかなか破れないのではないでしょうか。68桂を繰り返す手順が楽しく、趣向詰としても一級品と思います。

軽趣向好作選128

 今年もノルマの全国大会記念詰将棋の解説を書かせていただきました。いつも自前のワードファイルで作っているのですが、今年は最初に昨年のをクリアしたときに1行を14文字設定にしてしまったらしく、須藤さんがPDFにしたところで18行オーバーという大惨事に。なんとか4ページに納めましたが、解説文がやたらギュウギュウに見えたら、「ああ、全部ギリギリの文字数になるように削ったんだな」と思ってもらえれば間違いないです(笑)。


 その点、このブログは行数気にせずに書けるのが良いところ。今日は軽趣向好作選です。
20241104miyaura
▲33銀△45玉▲36角△56玉
▲59龍△67玉▲58角△56玉
▲85角△66玉▲68龍△56玉
▲67角△66玉▲94角△56玉
▲67角△66玉▲58角△56玉
▲57歩△45玉▲65龍△同馬
▲36角△34玉▲35歩△同桂
▲45角△同玉▲44金まで31手。
 比較的手が付けやすく、調子よく59龍~58角としますが、56玉と銀を取らずに逃げるのがうまい抵抗で、94に落ちている歩を取ると45玉とされて失敗。94角ではなく一歩手前の85に開くのが落ち着いた手で、45玉には54龍、同玉、63角成で詰み。これで66銀を取らせてから67角・66玉型で94歩を取るのが正解です。
 2歩を手にして58角といったん元に戻し、57歩から収束に入ります。長くなりすぎず、かつ知恵の輪を形成した龍・角を綺麗に消した着地が見事で、軽趣向らしい楽しさ満点の作品です。


軽趣向好作選127

 すみません、前回の記事の詰将棋学校好作選(参考)の数字が間違ってました。27の参考図となります。

 ということで、今回はだいぶ久しぶりの軽趣向好作選です。
20241020souma
▲89角△87玉▲78馬△76玉
▲45馬△87玉▲78角△76玉
▲56角△87玉▲37飛△同香成
▲78角△76玉▲89角△87玉
▲78馬△76玉▲12馬△87玉
▲78角△76玉▲23角成△87玉
▲78馬△76玉▲89馬△87玉
▲78馬引△76玉▲56馬△87玉
▲78馬上△76玉▲88馬まで35手。
 玉方の65~64と96の2つの逃避ルートを防ぐため、89~12の馬の開き王手が続く仕掛けになっています。96玉と唯一逃げられるのは37飛の瞬間だけですが、それを予防するために45馬・56角型を作っておくわけです。
 ではなぜ37飛と捨てるのか、は角を馬にするため。23手目でそれを実現します。角を馬にすることで何が出来るか、は最終手で明らかになります。初形と34手目の局面を比べると……とわざわざ言うまでもないですね。とても分かりやすく楽しい趣向で作者の違った一面を窺うことが出来ます。
 なお、12手目同銀成ですと、27手目68馬が生じます(同手数なので希望限定ですが)。

軽趣向好作選126

 昔遊んでいた戦国シミュレーションゲームがまだプレーできることを知って買ってみたのですが、昔と変わらずハマってしまい、だいぶ時間を費やしてしまいました。今のネトゲはもっと面白いんでしょうね。廃人になる、というのもわかる気がします。

 本日は軽趣向好作選。こちらもハマる内容となっております。
20240923inoue
▲45飛△35桂▲26銀打△14玉
▲15飛△24玉▲35銀△15玉
▲26銀引△24玉▲25銀△15玉
▲16銀引△24玉▲25銀△15玉
▲16歩△同と▲同銀引△24玉
▲25銀△15玉▲36銀引△24玉
▲35銀△15玉▲16歩△25玉
▲17桂△14玉▲15歩△同玉
▲46銀△24玉▲35銀△15玉
▲44銀△24玉▲33銀生△34玉
▲44銀成△24玉▲25飛△14玉
▲26桂まで45手。
 45飛と離して打つ手にいきなり桂中合が出ます。これを同飛と取ると25桂、26銀、24玉で逃れるので26銀打と押えますが、14玉とされると虎の子の飛を打たざるを得ず、35銀にその飛を取られてしまって心細くなりますが、実はここからが主題。26銀引、24玉に25銀~16銀でまず16歩をはがし、さらにその歩を使って17のと金も消去。これはその次に25銀~36銀引としたときの35桂合に16歩を用意したもの。そこで36銀には24玉としますが、35銀として、26桂と打つ形を作りにいきます。たとえば14玉なら26桂、15玉、46銀、25金、16歩、24玉、25飛以下。これを防ぐため、玉方は15玉、16歩、25玉で桂を17に打たせて凌ぎます。が、15歩、同玉、46銀と落ちている桂を取る手がありました。14玉にはまた26桂ですので24玉ですが、落ち着きはらって35銀~44銀とソッポに開き、33銀生~44銀成とすることで34の逃げ道が無くなり、25飛で収束します。
 舞台装置を作る序からひらひらと左右に舞う銀の動きが理知的で美しく、見るだけで十分に楽しめます。作者の面目躍如の傑作です。

軽趣向好作選125

 最近、令和のコメ騒動みたいなことが起きてますが、構図としては昭和のオイルショックのときと大して変わっていないような気がします。ネット時代になっても、そういうところは変わっていない、ということなのかな。


 今日は軽趣向好作選。似た雰囲気の2作品です。
20240901hirose
▲27龍△46玉▲19角△28歩
▲同角△35玉▲47桂△同飛生
▲24龍△36玉▲48桂△同飛成
▲27龍△35玉▲47桂△同龍
▲36歩△同龍▲24龍△同玉
▲46角まで21手。
 27龍、46玉に19角と遠打。35玉は24龍までですので、28歩と捨合しますが、この時点で「ああ、24龍と捨てて46角までの筋かな」と見当が付きますが、すぐに24龍は36玉で詰みません。一方で36歩は打歩詰になっています。
 落ち着いてまず47桂と打ちます。同飛生とされて打歩詰は打開されませんが、47を塞いでおくのがミソ。これで24龍、36玉に48桂が局面打開の好手です。同飛生は27龍、35玉に今度は17角とする手があります。同香成は26龍まで、46玉は35角、55玉、57龍まで。この57龍を防いで同飛成とするのが最善ですが、再度27龍として47桂と戻せば今度は龍になっているので打歩詰が打開され、36歩と捨てて予定調和の24龍捨てが実現します。
 角遠打から両王手の筋は作例もいくつかあるのですが、飛成らせを入れることで軽趣向に仕立て上げるセンスは流石です。

20240901ueda
▲28桂△同と▲48桂△同角成
▲45銀△同銀25龍△37玉
▲28龍△36玉▲25龍△37玉
▲38歩△同馬▲49桂△同馬
▲28龍△36玉▲48桂△同馬
▲37歩△同馬▲25龍△同玉
▲35馬まで25手。
 初手28桂~48桂とまず桂を連続捨てし、1筋の香の効きを通して45銀が舞台作りの一手。同玉なら34龍以下で詰みます。同銀には取れない25龍が気持ちの良い一手で、37玉に28のと金を取って調子が良いのですが、36玉とされたときに25龍~28龍の千日手になることに気づきます。37歩と打てれば良いのですが生憎二歩。そこで、25龍、37玉に38歩と消し、49桂~28龍~48桂で馬を元の位置に戻せば、37歩が実現して25龍捨てが決まります。
 軽めのテイストですが、タネとなる28と金と48馬を序奏で動かす部分を含めて完璧な表現で、流石上田氏と唸らされます。

軽趣向好作選124

 昨日は詰とうほく。台風の影響が心配されましたが、ギリギリでそれてなんとか無事開催できました。くるくる展示室の冊子をUraさんからいただき、楽しみました。石川さんや小笠原さんの作品を解いたり、長編の修正について懇談したりであっという間の4時間でした。
 次回は11月23日(土)で申込しています。


 本日は軽趣向好作選です。
20240818tanigawa
▲28飛打△39玉▲38飛△29玉
▲28飛右△19玉▲18飛△29玉
▲28飛左△39玉▲49金△同玉
▲48飛△59玉▲58飛△69玉
▲68飛△59玉▲58飛右△49玉
▲38銀△39玉▲59飛△28玉
▲29銀△27玉▲18銀△26玉
▲29飛△15玉▲16歩△14玉
▲15歩△同玉▲65飛△45歩
▲同飛△14玉▲24飛△13玉
▲14歩△12玉▲23飛成△同玉
▲34金△22玉▲13歩成△同玉
▲43飛成△14玉▲23龍△15玉
▲24龍△16玉▲27龍△15玉
▲16歩△14玉▲24金まで59手。
 入玉形の無防備図式で飛打から入るしかありませんが、すぐ左に追うのではなく、いったん28飛右~18飛で19の桂を消去します。19桂を消去した効果は49金~48飛~58飛としたとき、49玉の変化で明らかになります。48飛右、39玉、28銀、29玉、49飛、18玉で桂がないので19飛までで詰み。
 やむを得ない69玉に68飛とすると、79玉は88銀があり、右に戻ることになります。前が空いている68飛を残して58飛と持駒の銀で今度は上に追います。15玉に65飛を急がず、16歩~15歩と消去しておくのがうまい。玉方も65飛に45歩で抵抗します。24飛に13玉とギリギリ逃れたように見えますが、14歩~23飛成~34金とし、13歩成~43飛成を実現すれば詰みに至ります。
 飛の横追いに不規則な縦追いを組合せ。プロ棋士らしい読み込まれた構成の作品です。

軽趣向好作選123

 来週はお盆ですが、その後17日に詰とうほくが予定されています。夏休み中という方、ぜひ足をお運びください。


 本日は軽趣向好作選です。前回と打って変わって、いかにも、という作品。
20240804tonami
▲37龍△同玉▲33飛△26玉
▲36飛成△17玉▲29桂△同と
▲16龍△28玉▲18龍△37玉
▲38龍△26玉▲36龍△17玉
▲16龍△28玉▲18龍△37玉
▲48龍△26玉▲46龍△17玉
▲19香△同と▲18歩△同と
▲16龍△28玉▲18龍△37玉
▲48龍△26玉▲46龍△17玉
▲16龍△28玉▲29歩△39玉
▲36龍△29玉▲38龍△19玉
▲18龍まで45手。
 大駒4枚ながら王手すら限られている初形。よく見ると37龍捨てから33飛と打ち直し、29桂で18の効きを外せば龍追いが実現します。38香を取った後、もう一度回転して48龍~46龍で更に持駒を補充します。
 香歩を手にしてどうするか、というところで、いったんどかした29と金を19香と呼び戻し、18歩からこれもハガしてしまうのが好手順でした。このと金を消すことで29歩と打つことができ、収束します。33~35手目は38~36龍でも可。配置と手順のバランスが良く、楽しめる作品になっていると思います。

 


軽趣向好作選122

 昨年冬にガス給湯器が壊れて、交換まで1か月半、エライ目にあったのですが、今年は夏突入と同時にエアコンが故障( ;∀;)。気温も出費もアツイ。

 こんなときにはやはり軽趣向ですよねえ(強引)。
20240721ueda
▲36桂△同と左▲25歩△同と
▲34飛生△23玉▲24歩△13玉
▲14歩△同玉▲15歩△同と
▲23歩成△同玉▲32銀生△13玉
▲14歩△同と▲23銀成△同歩
▲25桂△同と▲14歩△22玉
▲31飛成△同玉▲32桂成まで27手。
 33飛成は14玉で届きそうにないので36桂は打ってみたくなる手ですが、同と左とされるとやはり33飛成では打歩詰。そこで25歩と叩いて34飛生と13玉のときの打歩詰を回避する工夫が必要です。なお、25歩に13玉は14歩、同玉、15歩、13玉、12銀成、同玉、24桂以下。23玉とされたときに32銀生としたくなりますが、それではやはり13玉で打歩詰。24歩と叩くことで同とならば14の飛の効きが切れるので32銀生~14歩と打って詰みます。
 13玉が最善ですが、ここで慌てずに14歩~15歩と連打してと金を15に誘導。これで23歩成~32銀生と置き換え、14歩を実現します。最後は23銀成から綺麗にまとまりました。
 上田氏としては手遊びかもしれませんが、細かい手順と完成度に感心させられます。
20240721fukawa
▲26金△同銀▲61角△52香
▲同角成△27玉▲49角△37玉
▲39香△38香▲同香△27玉
▲31香成△37玉▲39香△38香
▲同香△27玉▲32香成△37玉
▲39香△38香▲同香△27玉
▲33香成△37玉▲39香△38歩
▲同香△27玉▲28歩△17玉
▲15飛△同銀▲18歩△26玉
▲36金まで37手。
 26金~61角と72金に狙いを付ける角打に捨合することで金取りを回避するのですが、歩合ではなく香合とするのが正解。この香合は何のためか、というと54に効きを作るため……ではなく、同角成、27玉のときに28香、17玉、15飛、同銀とすると18歩が打歩詰。これが歩合だと18歩が打てるので26玉、36金までです。つまり玉方香先香歩の捨て合です。
 さて、ではそれをどう打開するか、というと27角、37玉、39香で合駒をねだります。これで歩合ならば先ほどの手順で詰み。玉方はここでも香先香歩で38香合としますが、移動して繰り返すことで最終的には歩合を余儀なくされて詰む、という仕掛けです。
 深和氏らしい意欲的な表現ですが、ミステリ好きとしては33~31のどこかに駒を置いて邪魔駒消去できたらなあ、と思ってしまいます。作者も試してみたのかもしれませんが。

軽趣向好作選121

 昨日は来仙された角さんと懇親。年に1度の楽しみです。詰とうほくとタイミング合わないんですよねえ。惜しいところです。
20240630serita
▲37銀打△25玉▲26銀引△16玉
▲17銀△25玉▲16銀△同玉
▲45銀△25玉▲26銀△16玉
▲17銀△25玉▲36銀△15玉
▲26銀△16玉▲25銀左△同角
▲17銀△15玉▲16飛△同角
▲26銀まで25手。
 初手はほぼこの一手で、25玉に26銀上は36玉と戻られるので26銀引~17銀もこう指すところですが、25玉の局面でどちらの銀を26に上げても千日手模様。これを46銀を使ってうまく打開します。16銀と思い切って捨てて45銀とまず角の道を閉ざしつつ開き王手。26に合駒が効きそうですが、全部取って16飛と捨て、取った駒を打って詰みます。25玉とするしかないですが、そこで36銀と引く手を急がず、26銀~17銀と銀を置きなおすのが好手順。17銀型にして36銀と引くことで、15玉とする一手となり、26銀~25銀左とすることで25の逃げ道を塞ぐことが出来ます。最後は16飛と捨てて26銀まで、綺麗に収束。
 わずかな舞台装置の上を3枚の銀がチョウのように舞う美しい趣向で、この年のデパート年間優秀作を受賞した傑作です。

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