« 2023年7月 | トップページ | 2023年9月 »

2023年8月

詰将棋学校好作選2(再)

 大曲花火大会のバスツアーに参加してきました。仙台に戻ってきたのは朝の4時で、なかなかの強行日程。今日はほとんど機能していませんでしたが、天気にも恵まれて花火は最高でした。初めて見ましたが、すごいの一語です。60万人くらい集まるのだそうで、運営の皆さんは大変だったろうなと思います。ありがとうございました。

 さて、連載開始しました詰将棋学校好作選ですが、2回目にして早くもポカしてしまいまして、前回紹介して古関氏作はちゃんと半期賞を受賞していました。パラの半期賞掲載号に編集部ミスで載っていなかったのをそのまま信じてしまいました。良く調べれば気づいたはずで、失礼しました。ご指摘いただいたEOG氏に感謝。
 ということで、改めて第2回。今回は長編を紹介します。
20230827nishida
▲32歩成△同飛▲41と△同玉
▲51歩成△31玉▲41と△同玉
▲45香△31玉▲32角成△同玉
▲34飛△33角▲同飛成△同玉
『▲66馬△55と▲51角△32玉
▲42角成△21玉▲43馬△31玉
▲53馬△21玉▲54馬△32飛
▲同馬△同玉▲Ⓐ76馬△65と
▲34飛△33角▲同飛成△同玉』
『▲77馬……▲87馬……△同玉』
『▲88馬……▲98馬……△同玉』
『▲88馬……▲87馬……△同玉』
▲77馬△55と▲51角△32玉
▲42角成△21玉▲43馬△31玉
▲53馬△21玉▲54馬△32飛
▲同馬△同玉▲Ⓑ76馬△65と
▲33歩△21玉▲41飛△31角
▲同飛成△同玉▲75角△同歩
▲41香成△同玉▲85馬△42玉
▲41飛△33玉▲34銀△同玉
▲52馬△23玉▲43飛成△14玉
▲41馬まで133手。
Ⓐ34飛、33角、76馬の手順前後有。
Ⓑ33歩、21玉、41飛、33角、76馬の手順前後有。

 初形で98に置かれている歩を取りに行く馬鋸かな、と想像できるかもしれませんが、その取り方は非常に精緻です。
 まず45香と足場を据えて32飛を入手して、34飛、33角合で33まで引っ張り出して66馬。で、次は76馬としたいのですが、51角、32玉、76馬では65とで詰みません。76馬とするためには32玉型で持駒飛にする必要があります。そのために42角成からもう一枚の角を馬鋸で54まで引っ張ります。31玉には64馬、21玉のときに76馬で2枚馬の効きが発生して詰むので、54馬には32飛合を余儀なくされ、これで目的の76馬を達成できます。馬鋸の1コマずつ動かす原動力に別の馬鋸を使う、複合馬鋸となっているのです!
 作者が用意した仕掛けはこれだけではなくて、98歩を取った後も精巧の一言。76まで同様に戻してきた後で取った歩を33に据えて41飛、31角合、同飛成、同玉の瞬間、75角が刮目の決め手。当時の担当者もこの一手の局面を切り出して載せています。動く将棋盤載せてますので、ぜひ確認ください。同とは32歩成まで、同飛は同馬以下、そして作意の同歩には……ここで手を打った人は相当なマニア。そう、このときのために、序の5手目から7手目で52歩を消去しているのです。
 41香成から飛を入手すればゴールですが、34銀から52馬で気持ち良く、かつ長すぎない纏めも主題と調和しています。ⒶⒷの手順前後はありますが、非常にシンプルな仕組みで複合馬鋸を実現した傑作です。

8月の詰とうほく+軽趣向好作選100

 昨日詰とうほくを開催しました。蒸し暑い日でかつ駅から遠目ということで着くまでが大変だったという声が多かったですが、それでも8名参加。利波さんが上梓されたばかりの軽趣向好作選やUraさんの大作参考資料の話題等、いつもどおりのんびり楽しみました。先週行われたたま研の出品作の一部を解いたり、あとは新聞用に作りためている作品を見てもらったり、という一日でした。尾形さんが悩んでいる、という7月号芹田氏作を2次会までかかってやっと解図しました。いつもながらうまく作るものだなあ、と思います。
 次回は11月18日なのですが、抽選の競争率が高そうで心配です。当選しますように。。。

 先ほどのたま研作品展のテーマは趣向作だったのですが、ちょうど軽趣向好作選も100回になりました。ネタがたくさんあるのでまだまだ続きます。ということで、特に力を入れることなく、今回も軽くて楽しめる作品を紹介します。
20230820fukawa
▲24桂△同銀▲22歩成△13玉
▲25桂△同銀左▲15香△同銀
▲14歩△同銀▲12と△同玉
▲13歩△同玉▲22銀△12玉
▲24桂△同銀▲13歩△同銀
▲11銀成まで21手。

 44角が33馬をピンしているような形で、その制約下で豊富な持駒を使って足場を築きにいきます。22歩成、13玉の局面では24銀の効きが強いので25桂から15香で外します。14合は23と~22銀ですね。14歩と一旦25に動かした銀を戻してから待望の12と~13歩~22銀。最後はもう一枚の銀も13に戻して、11銀成まで。
 気が付くと、持駒のうち桂香歩は全て捨てて、初形から23歩が22銀に変わっただけの局面になっています。作者らしいユーモアが感じられる作品です。

詰将棋学校好作選2

 次の土曜日、8月19日は詰とうほくです。今回は冬眠蛙の凡ミスで会場が遠目の戦災復興記念館となります。よろしくお願いします。そろそろ暑さも落ち着いているかな?

 前回より始めた学校好作選、作品の質は保証できますが、いつもながら解説下手でつまらなかったらすみません。本日は大学から紹介します。
20230813koseki
▲23桂生△12玉▲11桂成△同玉
▲21と△12玉▲34角成△13玉
▲25桂△14玉▲15歩△同玉
▲13桂成△35桂▲16歩△26玉
▲35馬△16玉▲28桂△同角成
▲46飛△15玉▲27桂△同馬
▲16歩△同馬▲14成桂△同玉
▲16飛△15銀▲同飛△同玉
▲26銀△14玉▲25銀△23玉
▲13馬△33玉▲22馬△43玉
▲32角△42玉▲41角成△同玉
▲31馬まで45手。

 広い初形で狙いどころがつかみにくいですが、実に味のある手順が展開されます。初形では43角をどかして飛成で王手の形を狙い、23桂生から桂を捨てて34角成の形を作ります。13玉に25桂から歩を叩いて13桂成が狙いの筋。これに対して35桂合が妙防で、単純に26玉、35馬、16玉とした場合に比べて、持駒の歩が桂に変わることになるため、16歩と叩けません。しかし28桂から46飛とするのが痛快な手段で同馬は17歩~27桂でぴったり詰みます。
 そこで15玉ですが27桂と活用して打歩詰を打開し、馬を入手します。23角~26飛の筋があるため、銀合が最善でが、その銀を取って足場を作り、取れない13馬が痛快な一手。最後は32角~41角成で詰みあがりました。54香一枚でよく纏まったものと思います。核となるような手はありませんが、手順全体が巧妙で感触が非常によく、また盤面全体が非常によく捌けているのも素晴らしい。ベテランの快作です。

軽趣向好作選99

 この企画は発表年月順で紹介しておりますが、同じ守備駒を連続で動かすというのがだんだんとトレンドになってきてまして、今回紹介する2作は両方とも玉方の応手が馬だけです。

20230806fujisawa


▲16香△同馬▲34飛成△同馬
▲25銀△同馬▲24飛△同馬
▲16香△15馬▲24金まで11手。

 初形で盤面から26馬が無効化されれば、持駒が香だけでも16香で簡単。さすがにいなくなってはくれませんが、24まで馬を移動させれば同じ手順が成立します。では25銀~24飛で、というところですが、25銀には15玉で詰みません。この手を防止するために更に準備工作として16香~34飛成が必要、という仕掛けです。
 最後も駒余りを防ぐ馬の移動合が入り、ごく簡単な仕掛けで全応手馬を実現しました。比較的考えやすくて好感が持てます。表紙に採用した詰パラ編集部にも拍手。

20230806serita
▲27銀△同馬▲18桂△同馬
▲28香△同馬▲27銀△同馬
▲36金△同馬▲27銀△同馬
▲18桂△同馬▲28香△同馬
▲46飛△同馬▲27銀まで19手。

 当時の冬眠蛙は中編以上になるとほとんど他人の作品を解くことはなくて、解説を眺めては感心する、というばかりだったのですが、本作は有名なトラブルもあったためか(笑)、リアルタイムで解いて非常に感心した覚えがあります。
 こんなに持駒が無くても簡単に詰みそうな局面に見えますが、27地点をカバーする16角が浮いているのが絶妙で、例えば初手28香とすると27飛、同香、16玉で27への脱出を防げません。そこで一工夫して27銀、同馬、18桂、同馬と18に追いやってから28香とします。27合とすると27地点が埋まるので36金~25銀で簡単。そこで同馬ですが、27銀とまた捨てます。これは次の36金のときに角を取られるのを防ぐ準備工作。ただ、その代わりに36金にも同馬と取られてしまいます。ここでまた27銀~18桂~28香が繰り返されるのが驚きの手順。実は前の28香、同馬の時点で46金が邪魔駒だったのですが、なかなか気づかないのではないでしょうか。最後、46飛も完璧な着地で、これだけ動いた馬が最後46と玉から離されて、浮き続けた16角を最後まで守り切っての詰上るのには感嘆するばかり。この年の看寿賞を受賞した文句なしの傑作です。


 馬と言えば、お隣福島県ではこの夏、4年ぶりに「相馬野馬追」という祭りが開催されました。なかなか勇壮な催しで、ぜひ一度見に行きたいのですが、聞いたところでは開催時期の変更が検討されているのだとか。暑いと馬の調子にも響くんですかね。まあそれ以前に、人間も武者姿がツライですか。時代を感じてしまいますね。

« 2023年7月 | トップページ | 2023年9月 »