« 次回詰とうほくのお知らせ + 「迷路」の改作図紹介 | トップページ | 冬眠蛙第5作品集⑤+番外1解答 »

「迷路」原図+改作図解説

 前回載せた「迷路」の原図については、作品集「雨滴」の第23番となっています。
20200913

95龍の配置が意味深で、この作品に凄まじい奥行きを与えています。原図の解説は利波さんの「将棋雑記」に載っております(リンク)。大変丁寧で、かつ熱い解説となっておりますので、ぜひご覧ください。

 さて、では今回の改作図を見てみましょう。
202009132_20200920223101
▲46と△64玉▲65香△53玉▲63香成△同玉
▲64歩△同玉▲55と△同玉▲76歩△45玉
▲75飛成△同香▲56金△54玉▲55金△53玉
▲64金打△43玉▲34と△32玉▲23と△同玉
▲67角△22玉▲56金△66歩▲同角△23玉
▲55金△22玉▲45金△23玉▲44金△22玉
▲34桂△23玉▲42桂成△22玉▲45金△23玉
▲46金△13玉▲12角成△同玉▲13歩△同玉
▲14歩△12玉▲24桂△同金▲13歩成△同玉
▲24銀△同玉▲33角成△14玉▲15金△13玉
▲24金△12玉▲34馬△22玉▲44馬△12玉
▲45馬△22玉▲55馬△12玉▲56馬△22玉
▲33香成△同飛▲同金△同玉▲43飛△24玉
▲35金△15玉▲13飛成△14飛▲同龍△同玉
▲47馬△13玉▲14馬△22玉▲23歩△同桂
▲同馬△同玉▲15桂△14玉▲24飛△15玉
▲17香△16歩▲同香△同玉▲27銀△17玉
▲18歩△同と▲26銀△16玉▲17歩△同と
▲25銀△26玉▲36金△15玉▲14飛迄113手。

まだ原図をご覧になっていない方は赤字の3手の意味づけだけでも考えていただければ、と思います。この深みはまさに謎解きの冥利です。さて、では利波さんの解説をどうぞ。(一部記載を補足しています)
--------------------------

 昭和20年代~30年代にかけて江東三人男と呼ばれた大作家が居られた。言うまでもなく、「小川悦勇」「北原義治」「黒川一郎」の諸氏である。この方々は傑作を残されましたが、それ以外にも自作に対する限りない愛情と既発表作品でも最善の図を求めて改良する向上心をお持ちでした。
 「迷路」という作品は精密な箱根細工のような作品で、直す余地の無い作品だと思っていましたが、この完成品と思われる作品でも作者には不満があり、その不満点を約60年振りに改良されました。
 改良図の解説の前に作者の原図に対する不満点を記述しておきます。(作者私信より)【目標は手順のスマート化と玉方7筋、攻方6筋歩の消去です。(意味付けが気に入らない)】作者の言を捕捉すると、原図の玉方72歩は初手84龍に対する74歩合を2歩禁でさせないため、また攻方68歩は初手より45と、同玉、56金、54玉、55金、53玉、44金打、63玉、64歩、73玉、84龍迄の早詰を2歩禁で防ぐ為の配置ということです。
 では、改良図の解説をしてみましょう。先ず初形玉が54配置から55の天王山配置になっています。更に、46との捨駒から入るのは巧い導入です。以下6筋の駒を消去してから55に誘導して、76歩と角道を通す手は、よく入ったものだと思います。そして13手目伏線手の75飛成が一見意味不明の難手です。意味付けは原図と同じで75に香の質駒を作る為です。しかしながら、この導入のやり取り時には72飛が必要駒であり、極めて発見し難くなっているのです。その為にあえてこの軽い導入を入れているのです。言い換えればこの軽い導入があったからこそ75飛成が光るのであり、作者はそこまで計算に入れているのです。
 この導入以下は原図と同じとなります。ここで作者の私信を再度引用してみましょう。【原図の2手目「香合」はスマート化の邪魔なので消去しました。(難易度は半減)その代わりに序盤に易しい流れの手順を作り、伏線の75飛成に迷彩を施す。(この飛捨てがスマート化の本命です、意味不明?な所が面白い)それと初形の整理です。】
 原図は74香合と合駒を動かして質駒にするという面白い構想でしたが、逆に言えば、74香合を出す為だけの95龍、85歩配置の初形に不満があったということなのでしょう。改良図では72飛は導入部の変化で必要であり、75飛成の発見を原図以上に難しくしている、より一層の謎解き重視の図になっていると言えましょう。
----------------------------------
実は冬眠蛙は小川さん宛の私信にて、香合を発生させて引き上げる原図も捨てがたい旨を記載しております(原図のFlash盤も置いておきます)

比べてみると利波さんが書いているように75龍の発見を難しくしてより謎解き重視になっています。つまりどちらかというと、鑑賞者よりも解答者向け、ミステリでいえば普通に読んでいる人よりも探偵と一緒になって犯人探しを楽しむ人向けに直されたような感じではないかなと思っています。さて、皆さんの好みはどちらでしょう。

 羽生九段が龍王挑戦になりましたね。二日制というのはベテランにとって有利なのか不利なのか、ちょっと興味があるところで楽しみにしています。ではでは。

« 次回詰とうほくのお知らせ + 「迷路」の改作図紹介 | トップページ | 冬眠蛙第5作品集⑤+番外1解答 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 次回詰とうほくのお知らせ + 「迷路」の改作図紹介 | トップページ | 冬眠蛙第5作品集⑤+番外1解答 »