« 2020年8月 | トップページ | 2020年10月 »

2020年9月

冬眠蛙第5作品集⑤+番外1解答

ここ数日、急に肌寒くなりました。コロナコロナで騒いでいる内についに10月なんですねえ。。

さて、今日は第5作品集紹介を。今日は第5番です。

0505
実は恐ろしく古い素材を色々割り切って作品化したもの。発表時に近藤真一さんからコメントいただいた改作案を今回採用しました。ちょっとユニークな味があります。

〇番外編1・詰将棋ウォークラリー解答

※スタート作品
Start_20200927193901
▲66香△同と▲62飛△54玉▲63角成△65玉
▲85馬△54玉▲65飛成△同龍▲63馬△同龍
▲55金迄13手。
初手が一応変化伏線です。でもそれだけ。次は54。

2020083054_20200927193901
▲53飛△45玉▲52金△46玉▲55飛成△同玉
▲35飛△64玉▲65飛△74玉▲73馬△同玉
▲62飛成迄13手。
玉があちらこちらに動くので、この催し向けではあります。52金がソッポ金なのですが、73馬の筋に備えて64歩を置かなくてはいけなかったのが残念なところ。次は73。

2020083073_20200927193901
▲63銀成△同銀▲83桂成△同玉▲85香△93玉
▲73飛成△同角▲82飛成△同角▲84と△92玉
▲83と迄13手。
87馬は複数の余詰筋を消しているので仕方ないかと思いますが、62角は合駒で出したかった。次は92。

2020083092_20200927193901
▲91飛△83玉▲86香△同桂▲84香△同玉
▲74金△85玉▲75金△同玉▲95飛成△同馬
▲74馬迄13手。
86香~84香の連続捨て。これもウォークラリーっぽく玉移動にこだわってます。次は75。

202083075_20200927193901
▲64銀△66玉▲65金△同玉▲76銀△同と
▲66歩△同と▲74銀△同玉▲85角△65玉
▲83馬迄13手。
こじんまりとしていますが76銀~66歩が少しお気に入りの手順。最後は65。

2020083065_20200927193901
▲76角△56玉▲58飛△57金▲同飛△46玉
▲37金△同銀▲56飛△同玉▲57金△55玉
▲88角迄13手。
移動捨て合から両王手を経由して透かし詰。最後は都にたどり着きました。

 ウォークラリーはまだ冬眠蛙が詰将棋を始めてない、だいぶ前の全国大会でアトラクションとして行われたもの。バックナンバーを見ていて、楽しそうな催しだな、と感じて真似してみました。詰上がりの玉位置を固定しないと駄目ですので、変同を避ける逆算が基本になります。余詰が出ると大変なことになりますが(笑)。

 最近Amazonで古い金田一モノが全部Kindle化されていることを知って、少しずつ読んでます。横溝は作品によって結構作風を変えているんですよね。そういった部分も含めて楽しんでいます。次は何を読もうかな。ではでは。

「迷路」原図+改作図解説

 前回載せた「迷路」の原図については、作品集「雨滴」の第23番となっています。
20200913

95龍の配置が意味深で、この作品に凄まじい奥行きを与えています。原図の解説は利波さんの「将棋雑記」に載っております(リンク)。大変丁寧で、かつ熱い解説となっておりますので、ぜひご覧ください。

 さて、では今回の改作図を見てみましょう。
202009132_20200920223101
▲46と△64玉▲65香△53玉▲63香成△同玉
▲64歩△同玉▲55と△同玉▲76歩△45玉
▲75飛成△同香▲56金△54玉▲55金△53玉
▲64金打△43玉▲34と△32玉▲23と△同玉
▲67角△22玉▲56金△66歩▲同角△23玉
▲55金△22玉▲45金△23玉▲44金△22玉
▲34桂△23玉▲42桂成△22玉▲45金△23玉
▲46金△13玉▲12角成△同玉▲13歩△同玉
▲14歩△12玉▲24桂△同金▲13歩成△同玉
▲24銀△同玉▲33角成△14玉▲15金△13玉
▲24金△12玉▲34馬△22玉▲44馬△12玉
▲45馬△22玉▲55馬△12玉▲56馬△22玉
▲33香成△同飛▲同金△同玉▲43飛△24玉
▲35金△15玉▲13飛成△14飛▲同龍△同玉
▲47馬△13玉▲14馬△22玉▲23歩△同桂
▲同馬△同玉▲15桂△14玉▲24飛△15玉
▲17香△16歩▲同香△同玉▲27銀△17玉
▲18歩△同と▲26銀△16玉▲17歩△同と
▲25銀△26玉▲36金△15玉▲14飛迄113手。

まだ原図をご覧になっていない方は赤字の3手の意味づけだけでも考えていただければ、と思います。この深みはまさに謎解きの冥利です。さて、では利波さんの解説をどうぞ。(一部記載を補足しています)
--------------------------

 昭和20年代~30年代にかけて江東三人男と呼ばれた大作家が居られた。言うまでもなく、「小川悦勇」「北原義治」「黒川一郎」の諸氏である。この方々は傑作を残されましたが、それ以外にも自作に対する限りない愛情と既発表作品でも最善の図を求めて改良する向上心をお持ちでした。
 「迷路」という作品は精密な箱根細工のような作品で、直す余地の無い作品だと思っていましたが、この完成品と思われる作品でも作者には不満があり、その不満点を約60年振りに改良されました。
 改良図の解説の前に作者の原図に対する不満点を記述しておきます。(作者私信より)【目標は手順のスマート化と玉方7筋、攻方6筋歩の消去です。(意味付けが気に入らない)】作者の言を捕捉すると、原図の玉方72歩は初手84龍に対する74歩合を2歩禁でさせないため、また攻方68歩は初手より45と、同玉、56金、54玉、55金、53玉、44金打、63玉、64歩、73玉、84龍迄の早詰を2歩禁で防ぐ為の配置ということです。
 では、改良図の解説をしてみましょう。先ず初形玉が54配置から55の天王山配置になっています。更に、46との捨駒から入るのは巧い導入です。以下6筋の駒を消去してから55に誘導して、76歩と角道を通す手は、よく入ったものだと思います。そして13手目伏線手の75飛成が一見意味不明の難手です。意味付けは原図と同じで75に香の質駒を作る為です。しかしながら、この導入のやり取り時には72飛が必要駒であり、極めて発見し難くなっているのです。その為にあえてこの軽い導入を入れているのです。言い換えればこの軽い導入があったからこそ75飛成が光るのであり、作者はそこまで計算に入れているのです。
 この導入以下は原図と同じとなります。ここで作者の私信を再度引用してみましょう。【原図の2手目「香合」はスマート化の邪魔なので消去しました。(難易度は半減)その代わりに序盤に易しい流れの手順を作り、伏線の75飛成に迷彩を施す。(この飛捨てがスマート化の本命です、意味不明?な所が面白い)それと初形の整理です。】
 原図は74香合と合駒を動かして質駒にするという面白い構想でしたが、逆に言えば、74香合を出す為だけの95龍、85歩配置の初形に不満があったということなのでしょう。改良図では72飛は導入部の変化で必要であり、75飛成の発見を原図以上に難しくしている、より一層の謎解き重視の図になっていると言えましょう。
----------------------------------
実は冬眠蛙は小川さん宛の私信にて、香合を発生させて引き上げる原図も捨てがたい旨を記載しております(原図のFlash盤も置いておきます)

比べてみると利波さんが書いているように75龍の発見を難しくしてより謎解き重視になっています。つまりどちらかというと、鑑賞者よりも解答者向け、ミステリでいえば普通に読んでいる人よりも探偵と一緒になって犯人探しを楽しむ人向けに直されたような感じではないかなと思っています。さて、皆さんの好みはどちらでしょう。

 羽生九段が龍王挑戦になりましたね。二日制というのはベテランにとって有利なのか不利なのか、ちょっと興味があるところで楽しみにしています。ではでは。

次回詰とうほくのお知らせ + 「迷路」の改作図紹介

次回詰とうほくについてですが、11月14日(土)に仙台市青葉区の中央市民センター和室での開催となります。前回と場所が変わりますのでご注意ください。

さて、先日小川さんの作品集「雨滴」を公開させていただいたのですが、実は、小川さんよりいくつかの作品について改作図をいただいています。本日はその一つ、「迷路」について、改作図を紹介。

202009132
元の図も作者自身が三百人一局集に選ぶ傑作ですが、更に理知的な作りにしたような感じです。原図も含めて初見の方はぜひチャレンジしていただければと思います。
次回に利波さんによる原図および改作図の解説を掲載しますのでお楽しみに!


軽趣向好作選43

 パラ9月号が届きました。C級順位戦の自作を解いていただいた皆様、大変ありがとうございました。第5作品集に収録するので、そのときに振り返りたいと思います。本日は軽趣向好作選を。

20200906saito
▲65桂△52玉▲62角成△同玉▲63銀△51玉
▲52歩△同金▲同銀成△同玉▲63金△61玉
▲53桂打△51玉▲41桂成△同玉▲42歩△同金上
▲53桂打△51玉▲52歩△同金▲同金△同玉
▲63金△51玉▲41桂成△同玉▲42歩△同金寄
▲14馬△32桂▲同馬△同金▲42歩△同金寄
▲53桂打△51玉▲52歩△同金▲同金△同玉
▲63金△51玉▲41桂成△同玉▲42歩△同金
▲53桂打△51玉▲52歩△同金▲41桂成△61玉
▲51成桂△同玉▲52金△同玉▲53桂成△同玉
▲63金迄61手。

 持駒と盤面の金を見て、マニアな方なら金ハガシ趣向かな、と見当は付けられると思いますが、剥がし方は精緻そのもの。42歩~53桂打~52歩が基本線ですが、最初の桂打に同金とする変化は非常に難しいです。また最初の42歩に対して同金寄は31と以下、同金引は53桂打、51玉、52歩、同金に41桂成とする手があり早いです。30手目同金寄に対して14馬で5枚目の桂を入手することでピッタリ駒が足り、足場にしていた56桂を成り捨てて終わります。寡作ながら完成度が高く洗練された作品を多く発表している作者で、一昨年全国大会でお話しさせていただいたのがとても嬉しかったです。

20200906miyaura_20200906190801
▲59金△78玉▲58飛△同と▲12角△87玉
▲78角打△76玉▲77香△65玉▲85龍△同桂
▲66香△54玉▲55香△43玉▲44香△33玉
▲23角引成△44玉▲34馬△55玉▲45馬△66玉
▲56馬△77玉▲67馬迄27手。

 こちらは持駒こそ多いですが凡そ趣向っぽくない初形。12角と遠打することで、なんと4香連打から馬による追い戻しの趣向が現れます。95龍がうまい配置で遠打にともなう変化を処理しつつ4枚目の香を取る役割もこなしています。また59金~58飛の序が入ったことで意外性も抜群。作者のセンスが光る作品です。(余詰が見つかったようで、中編名作選所収の修正図にて掲載しています)

 台風が九州に迫っているようです。被害が多くならないようお祈りしております。皆様どうぞお気をつけて。

« 2020年8月 | トップページ | 2020年10月 »