中村雅哉氏作看寿賞作品を勝手に解説
以前の記事で、パラの名局ライブラリーに紹介されていた中村氏作が、主題である『時間差中合』に触れられていなかったのが気になったと書いたので、今回はこの名作を紹介したいと思います。中村さん、ご了承ください。
角を開いて開き王手する形ですが、先に結論を書きますと、この玉を詰ますには44を塞ぐのがポイントになります。持駒の銀を44銀と使うことになりますが、そのためには角を19まで引く必要があります。これは44銀、24玉のときに28龍と回るためですね。
というわけで初手から19角!35玉、44銀、同桂と首尾よく目的を達成。ここで継続となる手段が46角と一旦戻し、45玉に37角と角の位置を変える手順です。35玉には25金!という好手が用意されています。(変化図)
同玉の一手ですが、以下28龍、35玉、46銀で詰みとなります。角を37に移動しておいた成果ですね。
では玉方はどこかで抵抗できたのでしょうか?もう一度変化図を見てみますと、25金、同玉に28龍と回る手を防ぐため、37角の瞬間に47に合駒をできなかったのか?という点に行き着きます。たとえば、ということで47に銀を打ってみましょう。
これなら同龍、35玉、25金、同玉に27龍とは回れません。しかし、よく見なくとも、この局面は46銀の1手詰。残念ながら、この中合は成立しません。もう打つ手は尽きたのでしょうか。
違うのです。上の図は44を塞いだ後なので中合が成立しないのですが、初手19角のときに、先に中合しておく手があるのです!
この瞬間であれば、46銀は44玉で詰みません。同龍と取るしかないので、先ほどの角を37に入れ換える手段を見事に防ぐことが出来ました。これが後では効かない中合を先にやっておく、『時間差中合』という新しい手筋です。
この47の合駒選択が、歩が二歩で香が品切れ、桂は同龍、35玉、44銀、同桂、45龍、24玉、25金、23玉、34龍、12玉に24桂で詰んでしまうため、銀合とせざるを得ないのが玉方の泣き所。おかげで別の詰み筋が生じます。それが正解手順、という仕掛けです。
(解答)
▲19角!△47銀!▲同龍 △35玉 ▲44銀 △同桂
▲46角 △45玉 ▲54銀 △同香 ▲57角 △55玉
▲45龍 △同玉 ▲46銀 迄15手。
変化で右に角を引く手を頻繁に出しておいて、作意は57角とすっと左に引く手にしたのがニクイ構成。ただ、やはりなんと言っても本作は新しい中合に尽きるでしょう。詰将棋の世界の奥深さを改めて感じる名作でした。
この新しい手筋、後続作が今のところ知る限りでは出ていないようです。なかなか表現が難しいのは、今回改めて鑑賞しても分かりますが、昨今の優秀な若手作家の皆さんにはぜひチャレンジして欲しいものですね。
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今日は詰将棋解答選手権。藤井さん、全問正解で4連覇ですか…。詰みを探る手法が普通の解図と違うのかなあ、などと考えてみたりして。おめでとうございました。
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