詰将棋学校好作選43

 6月ももう半ばですね。順位戦の解答がなかなか進まず、今月も全コーナー解答は厳しいかなあ。

 さて、詰将棋学校好作選は本日から2018年下半期。今日は鮎川氏の長編趣向作です。
20250615ayukawa
▲75と△54玉▲63馬上△同金
▲65金△54玉▲63馬△46玉
▲45金△同龍▲同馬△同玉
▲56銀△同玉▲66飛△45玉
▲55金△同玉▲65と△44玉
▲45歩△同玉▲47飛△34玉
▲35金△同玉▲36飛△25玉
▲27飛△26桂▲同飛寄△34玉
▲35歩△44玉▲45歩△同玉
▲47飛△35玉▲36飛△24玉
▲25歩△14玉▲15歩△同玉
▲16飛△25玉▲27飛△34玉
▲35歩△44玉▲45歩△同玉
▲47飛△35玉▲36飛△24玉
▲25歩△14玉▲15歩△同玉
▲17飛△16歩▲同飛寄△25玉
▲27飛△34玉▲35歩△44玉
▲45歩△同玉▲47飛△35玉
▲36飛△24玉▲25歩△同玉
▲27飛△26桂▲同飛上△14玉
▲15歩△同玉▲27桂△14玉
▲16飛△24玉▲25歩△同玉
▲26飛左△34玉▲35歩△44玉
▲46飛△53玉▲56飛△62玉
▲52飛成△71玉▲83桂△81玉
▲93桂まで101手。
 冒頭20手が序奏で、17手目すぐに47飛としたくなるところ、いったん55金~65とで玉方55歩を消しておきます。これで45歩に対して53玉と引く手に56飛を用意します。ただ、56飛に62玉以降の手順も52飛成、71玉、72歩、82玉、87飛以下と結構指しにくい手順になっています。
 作意は45歩、同玉に47飛で2枚飛による知恵の輪になります。ポイントとなる形は36飛・25玉型での27飛で、ここで26桂合を入手することが出来ます。ただ、1回目は流れで実現するのですが、2回目は36飛、24玉、25歩に14玉とし、先に16桂を犠牲にして延命を図ります。これに対しては27飛からまた一旦左に追い、47飛・36飛型を作りますが、次も25歩に14玉とする手が成立します。そのタネは15歩、同玉、17飛に更に16歩捨て合とする手。これで36飛を動かして36飛・25玉型を防げるわけです。
 もう一度47飛・36飛型を作って25歩とすると、今度は14玉とする手には15歩、同玉、16飛、25玉に17桂とする手があり早くなります(詰方からすると17歩を消した効果ということ)ので、ようやく25同玉、27飛で最後の桂を入手して収束に向かえる、という仕掛け。44玉に45歩と叩く歩がなくあれっ?と思うかもしれませんが、45歩と叩かなくても46飛に適当な合駒がないので、53玉とせざるを得ず、最後は入手した桂2枚で桂ツルシ。

 精緻に出来た趣向作なのですが、残念ながら89手目収束に向かうところで17桂からの余詰が成立。作意順がギリギリの手順で、残り駒の制約もあり修正困難、とのことでした。今回少し調べてみましたが、序の4手をカットして、玉方22歩→21歩、11角配置すれば33香に紐がつくので余詰順は防げそうではあります。

 

軽趣向好作選をWeb版にしてもらいました。

 次回詰とうほく、8月23日(土)の13時から、前回と同じく青葉区中央市民センター和室となりました。なんとか予約取れて良かったです。暑い最中になるかと思いますが、ぜひ。

 さて、前に軽趣向好作選をまとめたものを図面作成ソフトで鑑賞できるようにしたものを公開しました。(コチラ
 これはこれで楽しめるかと思いますが、UraさんからWeb上で同様に棋譜再生も含めてできるようなプログラムをいただきました。Webでの鑑賞ということで、文字も大きく見やすく仕上げてもらってます。Uraさんありがとうございます。

 せっかくなのでこちらに公開します。添付のzipファイルをダウンロードして解凍後、「Program」フォルダにある「WebView.html」のファイルを開くと、以下のような感じで鑑賞できます。20250608

図面下の▶ボタンで再生も可能です。図面上でのクリックでもやれると思います。ぜひお楽しみください。

ダウンロード - 軽趣向好作選1.zip

 

軽趣向好作選142

 仙台はここのところ気温の低い日が続いてます。私寒がりなんですよねえ。今日から6月なのでこれからは暖かくなるかな。

 さて、今日は軽趣向好作選。有吉氏の2作品です。
20250601ariyoshi
▲19飛△79銀▲同飛△98玉
▲88金△同飛成▲89銀△同龍
▲同馬△87玉▲81飛△96玉
▲78馬△95玉▲77馬△94玉
▲76馬△93玉▲85桂△92玉
▲93歩△81玉▲54馬△同金
▲72香成△91玉▲82成香△同玉
▲73飛成△91玉▲92歩成△同玉
▲93桂成△91玉▲82成桂まで35手。
 18飛の効きがなければ77馬で詰むので、19飛は打ちたくなる一手。ただ、これに対して79銀合が粘りのある一手。ここまで近づけることで、97金寄、同角成、76馬の筋には88玉で逃れることが出来ます。
 ここからが少し驚きで、88金~89銀として飛を手に入れ、81飛の遠打が飛び出し、更に馬追いで下段に追い込む手順が展開されます。桂打から93歩で遠打の飛を取らせ、更に54馬捨てから収束します。おそらく遠打から作り始めたと思いますが、捨て合で近づけた飛を最後にしっかり働かせるあたりは流石の演出です。
20250601ariyoshi2
▲47金△同玉▲48飛△36玉
▲58馬△26玉▲27歩△同玉
▲39桂△同と▲18金△16玉
▲17歩△26玉▲28飛△37玉
▲27飛△46玉▲47飛△36玉
▲44飛△26玉▲38桂△同と
▲24飛△37玉▲27飛△46玉
▲47飛△36玉▲43飛成△26玉
▲23龍△37玉▲27龍△46玉
▲47龍まで37手。
 こちらは3手目に据えた飛が回転する趣向。途中開き王手で展開するのが面白い。意味づけは非常にシンプルで、桂を取り、2回目に飛を成ることで収束しますが、46歩が消えて55角の筋が通るので、2回目に入る前に38桂捨てが必要になる(省略すると27飛、38玉で逃れ)のがちょっとしたポイント。この55角は22にも効いているため、2回目の飛の成る位置も限定されており、気が利いてますね。
 ほぼ全ての舞台装置を作るところから始まるので、趣向にたどり着いたときには嬉しくなります。

 

詰将棋学校好作選42

 米騒動がなかなか収まらないうちに、年金についても変な動きに。どうも思うんですけど、政治家の方はどうして、現実を見せようとしないんですかね。私の中では、もう日本はどうやって痛みを分かち合いつつ、将来に向けて何を捨てなければならないかを議論しなければならない、という感じなんですが、皆うまい話しかしないんですよね。現実を認識させつつ、将来のビジョンを見せて欲しいものです。

 本日は詰将棋学校好作選。一桁モノです。
20250525nuita
▲77桂△74玉▲85桂△83玉
▲73桂生△72玉▲61桂成まで7手。
 ノンストップで桂が四段跳ねする超短編です。前例はどのくらいあるのでしょうか。香二枚並べつつ、54銀の余地を残す仕組みが秀逸で、ごくシンプルな仕組みで実現しました。ちゃんと桂を跳ねる選択だったり、桂成とする余地も残しているのが深みを与えています。変化・紛れを含めて味わっていただければと思います。

軽趣向好作選141

 昨日は詰とうほくでした。若干離れた中央市民センター開催になったうえ、生憎の天気となってしまい、ちょっと参加者減かな、と心配したのですが、久しぶりの戸村さんを含めて今回も11名参加でにぎわいました。利波さんの握り詰や戸村さん、小笠原さんの新作を解いたり、類作チェックしたり、馬屋原さんからいただいたUraさん作の改作案の話題であっというまの4時間でした。次回は8月23日か30日で調整しています。結構空きが少なくて、ちょっと心配。当選すると良いですが。

 さて、今日は軽趣向好作選。看寿賞特別賞を受賞した傑作です。
20250518hirose
▲55銀△同桂▲65銀△同香
▲64金△同香▲63銀△同歩
▲53金△同歩▲43銀△同桂
▲44金△同桂▲45金△同角
▲46桂まで17手。
 大量の持駒でびっくりするかと思いますが、なんとこれが17手詰。つまり、先手は全て持駒を打つ手の詰将棋です。さて、ではどのような手順なのでしょうか。
 目を引くのは持駒の桂ですが、玉の周囲は守備駒が効いており、足場に出来そうなのは46地点くらい。でも初手46桂では45玉で全然詰みません。では45銀、同角と塞いで46桂なら…44玉で駄目。なら44地点を44金で塞いでからやれば。でも53玉とされると42が抜けちゃいますね。では53地点をなんとか塞げれば。53金、同玉を詰ますためには。そこで気づきます。55地点で桂を飛ばしてから6筋の駒を全部吊り上げる手順が必要なのだと。そして、その順番は55銀からが正解です。初手65銀では53玉で詰まないので、最初に桂を跳ねさせて香筋を通すことになります。
 これで正解にたどり着きます。55銀からスタートして、65→64→63→53→43→44→45と玉の周辺に時計回りに捨てて、46桂まで!!よもや、と思われる手順をごくシンプルな構図で実現しました。軽趣向好作選75でも紹介した独特の発想の光る作者による、夢のような手順。この年の看寿賞特別賞を受賞した傑作です。

 

詰将棋学校好作選41

 次の土曜日、5月17日は詰とうほくです。場所が変わりまして、青葉区中央市民センターですので、ご注意ください。
 さて、今日は学校好作選です。短編曲詰の傑作です。
20250511mizoguchi
▲46桂△同桂▲94飛△74桂
▲63銀生△同香▲65銀△55玉
▲66金△同桂▲54飛△同銀
▲64馬△同香▲54馬△同龍
▲56銀打まで17手。
 94の成銀を取ると55玉で上に逃げられます。そこで初手46桂。55玉は82馬、64歩、65馬、同玉、83馬が好手順で詰み。同桂に94飛と取れば、55玉には66銀、56玉、92馬で詰みます。この92馬を防ぐ74桂中合が最強の抵抗。63銀生、同香、65銀、55玉、66金に同桂を用意しています。作意はここから更に大駒3枚捨てで畳みかけ、56銀打までで鶴の巣籠もりの詰上がりが実現します。
 駒取りこそありますが、密度の高い短編曲詰で申し分ない作品と思います。


軽趣向好作選140

 ちょっと来週までバタバタしているので、更新できるうちに。今日は軽趣向好作選です。
20250429kaneko
▲54銀△33玉▲34歩△同桂
▲23金△44玉▲45銀引△43玉
▲21馬△32歩▲54銀△44玉
▲22馬△33桂▲45銀引△43玉
▲32馬△同金▲54銀△44玉
▲45歩△同桂▲同銀引△43玉
▲35桂△同銀▲54銀△44玉
▲45銀上まで29手。
 54銀から34歩として23金を据えれば舞台装置が完成。44玉に22馬としたくなりますが、33桂合、45銀引、43玉、21馬、32桂合で不詰です。いったん45銀引として21馬とすれば32桂合は同馬~35桂で詰むので、歩合の一手。そこで54銀上~22馬とすると33歩は45銀引、43玉、21馬で今度は歩合ができず、桂合には同馬~35桂で詰み。33桂合が最善になりますが、今度は45銀引、43玉に32馬で歩を入手することが出来ます。以下は桂を45で入手し、今度こそ35桂が実現します。
 最長手順探しみたいな感触もありますが、序奏を含めて完成された作品です。

詰将棋学校好作選40

 ちょっと仕事の事情で先週は更新できませんでした。来週以降もちょっと微妙ですが、まずは更新できるうちに。今日は詰将棋学校好作選です。


20250427miura
▲24桂△13玉▲12金△同香
▲同桂成△同玉▲14香△同と
▲22歩成△同玉▲31角△12玉
▲24桂△23玉▲35桂△24玉
▲13角成△同と▲25金まで19手。
 実戦に出てきても不思議なさそうな、端正な初形です。22歩成とするのが自然に見えますが、同玉、31角、23玉とした形で11香と15とが強く、届きません。初手は24桂が正解で、23玉は45角と打って34合に32角成~23金と打つのが少し見え難い順ですが詰み。13玉とよろけるのが正解ですが、ここで更に重く12金から精算するのが意表の手段でした。14玉や23玉は13金打から46角です。
 更に精算して香を消した後、14香とするのも重要で、一見と金を近づけて損なようですが、22歩成~31角としたときの逃げ道を封鎖しています。35桂で足場を作り、13角成が爽快な収束。作者らしい丹念な作りが活かされた中編です。

軽趣向好作選139

 仙台はちょうど桜が見ごろとなりました。ただ、今日はだいぶ気温が下がって文字通りの花冷えに。土曜日にジョギングで楽しんでおいて良かったです。

 さて、今日は軽趣向好作選です。
20250413fukawa
▲27飛△16玉▲61角成△25桂
▲17飛△26玉▲38桂△同龍
▲62馬△35龍▲27飛△16玉
▲17歩△同桂成▲52馬△25桂
▲17飛△26玉▲38桂△同龍
▲53馬△35龍▲27飛△16玉
▲17歩△同桂成▲43馬△25桂
▲17飛△26玉▲38桂△同龍
▲44馬△35龍▲27飛△16玉
▲17歩△同桂成▲34角△25桂
▲17飛△26玉▲38桂△36玉
▲45角△同龍▲26馬まで47手。
 27飛、16玉で初っ端から打歩詰となります。61角成には25桂合が最善ですが、17飛、26玉、38桂、同龍として62馬で手がつながります。普通に35合なら27歩ですが、ここで取歩駒を逃がす35龍で今度は27歩が打歩詰。ところが、馬筋が変わったので、27飛、16玉に17歩が打てるようになります。ただ、同桂成に同飛では25玉で逃れ。そこで52馬とすると、再び25桂合が最善。ここで4手目の局面と見比べると(17に成桂はいますが)なんと馬鋸になっていることが分かります。森田手筋と取歩逃がしを使った仕掛け、なんと精巧なことでしょう!
 最後は34角として38桂と打ち、45角と捨てて収束。この45角を同龍と取らせるため、44まで馬を近づける必要ある、という仕掛けでした。
 才気煥発という言葉がピッタリくる作者ですが、その作品群の中でも特に輝きを放っている、完成度抜群の傑作です。

詰将棋学校好作選39

 少し風邪気味になってしまい、さえない週末です。早く治さないと。

 詰将棋学校好作選は本日長編です。小駒趣向作にしてかなりの難問です。
20250406hamada

▲53香成△同玉▲45桂△同金上
▲44金打△42玉▲33金△53玉
▲43金△64玉▲55と△同金
▲63金△65玉▲56と右△同金
▲同と△同銀生▲64金打△55玉
▲45金△同銀▲47と△59成桂
▲56歩△同銀▲同と△同玉
▲57銀△55玉▲54金△同玉
▲45銀上△55玉▲56銀引△54玉
▲53金左△64玉『▲65歩△同と
▲63金△54玉▲45銀上△55玉
▲56歩△同と▲同銀引△54玉
▲53金左△64玉▲63と△74玉』=A
▲75歩△同と寄▲73と△64玉
『A』
▲75歩△同と▲73と△64玉
『A』
▲73成桂△同香▲同と△同玉
▲72成桂△同玉▲82香成△同玉
▲85香△73玉▲83香成△74玉
▲84と△64玉▲63金△同玉
▲73成香△64玉▲74と△54玉
▲45銀上△55玉▲56歩△65玉
▲75と まで113手。
 盤面ぎっしりに駒が配置された小駒図式。まずは53香成~45桂として43金と右辺を押さえるしかありません。64玉に55とと取ると、「ああ金ベルトを敷くんだな」と見当が付きます。56で精算して45金~47とと開き王手をし、再度56での精算から57銀を据えれば舞台装置は設置完了。54金から45銀上でと金ハガシに入ります。まずは65とを剥がし、次いで75歩捨てで85とを呼び出して剥がします。最後に76とを呼び出したいのですが、56に打つ歩がもうありません。かと言って76とを残したままでは詰まず。さてどうしたものでしょう。
 実はタネははるか遡って5手目にありました。43金と打つのが当然の一手に見えたのですが、実は44金と控えて打つのが妙手。同金は同金以下、64玉は55と以下詰むので42玉と逃げるしかなく、33金~43金とすれば、43金と単純に追うのに比べて1歩多く持っているため、最後の56歩を打つことが出来る、という仕掛けでした。
 無事に76とを剥がした後、73成桂から精算し、84香を打てば収束に向かいます。ここでも捨て絞り趣向が出て最後まで楽しませてくれます。

 44金~33金は下段に逃げる変化もあるので、結構やりにくく、かつ単純に43金としても作意順が途中までそのまま成立する仕組みが素晴らしい。と金を剥がす順番も限定されており(最初の75歩に同と引の場合は、と金を剥がした後、45銀上~56歩~66歩で早い)、小駒趣向作の傑作と言って良いかと思います。

 

«軽趣向好作選138