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年末特別出題 隅の老人Aさん作 結果発表

 

今回は隅の老人Aさんに見せていただいた作品について無理やりお願いして出題させてもらいました。いい作品ですよ~。さてさて、では参りましょう。

 

▲75銀上△85玉▲86銀引△84玉▲75銀引△93玉

▲85桂△同金▲94歩△82玉▲81と△73玉

さてここです。この局面ですね。

Tochu1  

途中図(73玉まで) 

 

 

 

 

 

 

ここで▲74銀として金を取りたくなりますが、▲74銀△同玉▲85銀は△75玉▲74金△66玉で失敗します。ひとひねりして▲74銀△同玉に▲44飛成△73玉▲74龍△同玉▲85銀も△75玉▲74金△66玉▲78桂△67玉で失敗します。(下図)

Sippai1  

 

失敗図(67玉まで)

 

 

 

 

 

ではどうやって詰ますのでしょう?

**途中図から**

▲62銀生△同玉▲12龍△同馬▲52香成△73玉

Tochu2  

 

途中図2(73玉まで)

 

 

 

 

 

意味の見えない龍捨てが出ます。おおっ?という感じでしょう?でもよくわからないですよね。現にこの局面から同様に▲74銀△同玉▲44飛成△73玉▲74龍△同玉▲85銀としても同じく△75玉▲74金△66玉で詰みません。どうすればよいのでしょう?

**途中図2から**

▲64銀△同玉▲54と△73玉▲64と△同玉

▲44飛成△73玉▲74龍△同玉▲85銀△75玉

▲74金△66玉▲78桂

45のと金を消去するのが第2の伏線です。大して変わりがないように見えますが、下の図をご覧ください。Tochu3

 

 

 途中図3(78桂まで)

 

 

 なんと、12に馬を移動させ、45とを消去したことで△67玉が▲12馬までで詰ませられるのです!

 …ということで後手は同馬の一手。以下の収束をご覧ください。

**途中図3から**

△同馬

▲54歩△67玉▲12馬△66玉▲22馬△67玉

▲23馬△66玉▲33馬△67玉▲34馬△66玉

▲44馬△67玉▲45馬△66玉▲55馬△67玉

▲56馬迄53手。

最後は馬ノコが登場。お待ちかねの詰上り図を。

Tumeagari  

 

詰上り図(56馬まで)

 

 

 

 

 

美しい市松模様が出現しました。

二重伏線が見事ですが、全体的にものすごく難しい、というわけでもないですし、特に、詰上がりがある程度見えるので、普通であれば難しい伏線にもなんとか辿り着けるところが嬉しいですよね。 

★作者の言葉

これの原図はS29年に詰パラに縦4列の市松で発表しました。
しかし、簡単な早詰があり解答者には創意まで伝わりませんでした。
当時は、1発勝負、「不完全作は即作者の負け」の意識が強く、例え修正が出来ても修正図の発表は出来ませんでした。(4列での修正は難しく5列にして保存)


その後、岡田敏さんが同じ構想で38年頃に発表し、それが1号作になっています。
(S29年頃から敏さんとは文通していました、ですから、敏さんの馬鋸曲詰
1号作は私との隠れた共作という事になります)

ということで修正図だったのですね。ワタシも何度も余詰に泣かされたので、気持ちはよくわかります。(あ、お前みたいなヘボ作家と一緒にするなって?ごもっとも)実はちゃんとそこに触れたコメントもあります。では全短評をどうぞ!

◎解答者 7名 全員正解

護堂浩之「年末特別出題の解答です。明らかに、あの作の改作と分かるので、私が知らぬふりをするのもどうかと思いまして、一応解答しておきます。詰パラ昭和30年8月号に載った作品(小川悦勇名義)の改作。その時の図を1筋右にズラして9筋にスペースを作り、その空間を利用して10手逆算した(その代わりに、85桂のタイミングがずれたので、実際には8手伸びている)ものといえる。11手め以降は前作と全く同じなのでそちらには触れないものとして(本来は馬ノコ+竜捨ての伏線に触れるべきなのだろうが、この場合、私はそれに触れない)、では前半10手の価値を考えると、銀の2段活用の手触りは確かに悪くない。しかし、それ以上に、62銀不成が純粋に伏線をするための手となったことが、今回の改作の最大の効用ではないか、と思う(前作は、駒取りを兼ねたものになっていたので)。あるいは、ここの修正が、今回の改作の理由だったのだろうか。50数年前に、最初からこの図で発表されていたら、というのはさすがに望蜀なんでしょうが」

☆なんと、饗宴メンバーであの「馬子唄集」の護堂さんからのコメント。驚きました。銀生が純粋な伏線になったのは確かに大きい。

たくぼんさん「34手目67玉を詰ますための12龍捨て&45と消去の伏線があり、そして収束馬鋸も入る詰上り市松の炙り出し。あぶり出しでこれほどの内容を含んだ作品はそうそうはお目にかからない。一言『素晴らしい!』」

オタマジャクシさん「初形に市松模様がうっすら見えているので、なんとか私でも解けました。市松模様に55歩や45とは邪魔と気づき,逆に,なぜその駒があるのかを考えたら解けました。15手目の龍捨ての場所は,収束までのお楽しみで先に進めます。詰め上がりの形を探していたら,馬ノコがでてきてビックリ!45との配置は,ちょっと構想がぶつかり合った感じがしますが,入れたいですね」

☆馬ノコが見えたときの嬉しさ、想像がつきますね。

馬屋原剛さん「盤に並べてしばらく考えていると詰め上がりの予想がついたので12手目までは確信がもてました。その後12龍の好手をみつけ馬ノコがでてきた時は、手数からある程度予想はしていたものの気の利いた演出だと感じました。そして最後に綺麗な市松模様が出てきて大満足でした。そのあと変化を確認したらと金を捨てる前に12龍としなければならないことに気づき危うく引っかかるところでした。正月から楽しませてもらいました。」

☆と金を消去する前に12龍とした場合は22歩合で詰みません。この場合は45とが相手の馬筋を塞ぐ必要駒であることがポイントなんです。本当にうまくできてますよね。

隅の老人Bさん「傑作です。『苦労して解きました』と云いたいが、詰手順は知っていました。この作品の収束、馬鋸の処は、昭和41年3月発表の岡田敏氏の市松作品と類似していますが、実は、この作品の創作されたのは、それよりも10数年以前です。

ただ、残念なのは、発表時は不完全。
このたび、Aさんが、これを修正、蛙さんのご厚意で、再度の出題となりました。
良い作品は、いつ並べても良い。古さを感じません。
特に、12竜の妙手には、感心。さすがAさんです。
不完全作を修正して、後生に残すのも大切な事ですね。」

しろねこさん「非常に難しく何も浮かびませんでした。まだ曲詰などの詰め将棋に目が慣れていません。」
☆メールチェック漏れてました。誠に申し訳ありません。う~んそうですね、解図はやはり慣れることが一番重要と思います。あ、あと「曲がり詰め」となってましたが、詰棋では「きょくづめ」と読みます。

利波偉さん「作者名と配置から市松模様になるのは推測できたのですが、左斜上半分の市松模様になると即断したたため、投了寸前に自らを追い込んでしまいました。(それはパラ1955年4月号の氏の発表作の右斜め下半分の市松模様の傑作の対になる作品だと思ったからです。)
 12龍の伏線と45とを捨てる伏線が78桂を捨てる手と複雑に絡んだギミックは氏ならではの大型曲詰で、他の追随を許さない作者の詰棋観を内包した傑作です。
 解いた後、データベースで調べたら、1955年8月号詰パラの修正図なのですね。9筋配置が若干重い理由が解りました。でもこの作品を1筋寄せることによって修正をし、しかも9筋も舞台づくりに一役かわさせるとは、流石の修正図です。今から半世紀も前の作品をこのような形で甦らせる。前の風車をたくぼんさんのHPで復活させた時も感動しましたが、今回もまた感動を与えていただきました。作家というものは、かくあるべしを体現してくれる、氏に乾杯」

☆最後をしめていただきました。ありがとうございました。ワタシも仲間に入れさせてもらいます。乾杯!

短コンと違って好き放題書けるので目一杯書いてしまいました。日付変わってしまいました。見づらくてすみませんです。

○○ 当 選 者 ○○

・当初の賞品の代わり…隅の老人Bさん・護堂浩之さん

・短コン短評…オタマジャクシさん・馬屋原剛さん

後日メールにて送付します。お楽しみに!

 

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コメント

1月11日20:00に解答を送信しました。解答者に名前がありません。

投稿: しろねこ | 2008年2月 5日 (火) 11時09分

こんばんわ。初カキコです。いい作品ですね。
で、初カキコでこんな書き込みするのもアレなんですが、▲54と△73玉▲74と△同玉の部分は誤記では・・・(細かい指摘)

投稿: のんびりさん | 2008年2月 5日 (火) 12時04分

しろねこさんすみませんでした。追加いたしました。ご確認ください。

のんびりさんはじめまして。あの「のんびり会」ののんびりさん?誤記指摘ありがとうございました。また遊びにきてくださいね!

投稿: 冬眠蛙 | 2008年2月 5日 (火) 22時54分

「あの」、っていうほど浸透してないはずなんですが・・・(笑)
それはともかく、いつもこっそりと読んで楽しんでます。これからも頑張ってください

投稿: のんびりさん | 2008年2月 5日 (火) 23時05分

追加してくださりありがとうございます。
今後ともよろしくお願い申し上げます。

投稿: しろねこ | 2008年2月 6日 (水) 19時47分

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