詰将棋学校好作選8

 久しぶりに映画を見てきました。初めての北野映画「首」。色々とまあありますが、個人的にはそこそこ面白かったです。壮大でしたね。

 本日は学校好作選です。
20231126nagakabe
▲53角△66玉▲77銀△同玉
▲86角成△67玉▲76角△同桂
▲68金△同桂成▲76馬まで11手。

 上にも下にも広くて捕まりそうに見えませんが、53角が盤上この一手の好手。同飛は65金、64合は86角、85玉、94銀、74玉は92角、83合(ここで73玉を詰ますため、53角は限定打)、64金で詰みます。66玉で上部脱出を図るのが最善ですが、77銀~86角成が継続手段。67玉に76角~68金が決め手で、桂を二段跳ねさせて76馬まで。
 重厚な手筋物が得意な長壁氏の作風が良く出た作品です。

 来週末は旅に出ており、更新をお休みさせていだきます。次回更新時には詰とうほくの開催予定もお知らせできるかと思います。

詰将棋学校好作選7

 次の土曜日は詰とうほくです。青葉区中央市民センター(前パラに「中央市民センター」だけで載せたら、宮城野区にも中央市民センターあるんだそうで、佐々木さんが間違えそうになったとか。すみません)になりますので、お間違えなきよう。

 今日は学校好作選です。大学級のあぶり出しを紹介。
20231112saito
▲48香△59銀▲同飛△68玉
▲57銀△78玉▲77馬△同玉
▲89桂△同と▲86龍△78玉
▲89龍△67玉▲69龍△57玉
▲66桂△48玉▲58飛△37玉
▲39龍△27玉▲38龍△17玉
▲18歩△同玉▲16桂△17玉
▲28龍△16玉▲56飛△15玉
▲17龍△25玉▲26飛△35玉
▲37龍△45玉▲46飛△55玉
▲35龍まで41手。

 香の一目あがりに銀捨合という応酬でスタートします。銀捨合の方は意味づけは比較的考えやすいかと思いますが、初手47香もなかなか有力な感じもします。57銀に78玉がギリギリの応手で意外と詰ましにくいのですが、77馬と思い切って捨てて89桂で道が開けます。龍でと金を取り、中央に追って66桂の局面がポイントで、初手47香だとここで47玉、58龍、37玉となり、この龍飛の位置関係では詰まない仕掛けになっています。48玉に58飛、37玉、39龍と追い、58飛・38龍型を作れば18歩~16桂(36桂では後でその桂が邪魔になります)で手が繋がる仕組み。
 最後は飛を6段目、龍を7段目に据えての龍飛追いから75銀を活かして35飛までの詰上がり。タイトルの宵の明星は夕方から夜にかけて、金星が明るく輝くを指す言葉で、作者は近くにカシオペア座を配してその景色を描いてみせています。手順・詰上がりともになかなか洒落の利いた作品と思います。

詰将棋学校好作選6

 生まれて初めてチョコレートドリンクなるものを飲みました。チョコを溶かしたものを想像して今まで敬遠していたワタシが大馬鹿でした。美味しかった。

 さて、詰将棋学校好作選。今回は短大から。
20231029ogasawara
▲19歩△27玉▲18銀△26玉
▲44馬△同歩▲35馬△同桂
▲29飛△28角▲同飛△27角
▲同飛△16玉▲17飛△26玉
▲16飛△同歩▲15角△同桂
▲27歩△同桂成▲15角まで23手。

 19歩~18銀は足場作り。19銀にも誘われますが、27玉、28銀、18玉で逃れます。
 26玉の局面で48馬は37歩で全然駄目、となると35馬と捨てて29飛と回る手段に想到しますが、すぐ35馬は同桂で27に効きを作られてしまいます。これを回避するため、先に66馬を44に捨て、35馬、同桂に86飛を準備する必要があります。
 2枚馬を捨てて29飛で今度は玉方が困っているようですが、ここで先ほどもらった二枚角を連続捨て合するのがまさに返し技の妙防でした。これを取って、17飛から16飛で収束します。
 明快な論理で盤上の二枚の馬を持駒にしてしまうマジックで、ストーリー性豊かな好作です。

詰将棋学校好作選5

 マラソンのグランドチャンピオンシップをテレビ視聴。川内優輝の走りに感動しました。私にもまだやれることがあるんじゃないか、という気になりますね。

 本日は学校好作選。超短編から1作紹介します。
20231015yamada
▲14角△46玉▲25龍△47玉
▲45龍まで5手。
 使用駒わずか8枚ですが、実に含蓄のある手順が展開されます。
 初手83角にも誘われ、同龍なら38龍までですが36玉で逃れ。正解は非可成地点に打つ14角。これに対して25合は57金~25龍で駒が余ります。46玉には25龍と打った角の効きに潜り込むのが好手で、これは37合に57金を用意したもの。47玉と戻らせると、なんといつのまにか14角・25龍形になっているので45龍の両王手で詰み、という仕掛けです。
 バッテリー交換しているわけですが、まだ「バッテリー」という言葉すらない時代にこれだけ完成度の高い作品を出しているのは驚きです。山田氏の開拓者としての一面が良く現れた作品と思います。
 

詰将棋学校好作選4

ここのところ予期していないイベントもあり、忙しい状態が続いていました。来週の3連休も更新できないかもしれません。

今回は学校好作選。大好きな作品で以前も紹介したのですが、良いものは何回紹介しても良いということで。
20231001souma
▲14角△21玉▲23香△12玉
▲62龍△42銀合▲22香成△同玉
▲33銀成△11玉▲22成銀△同玉
▲42龍△13玉▲12龍△同玉
▲23銀△21玉▲31馬△同玉
▲32銀成まで21手。

 初手目につく62龍ですと、23玉、41角に34玉と上に逃げられてしまいます。14角が作家的に美味しい導入。同龍は34香がピッタリ。23香合くらいだと62龍、21玉、31馬と捨てて33香で詰みます。23金合の変化が難しいのですが、43銀生とするのが好手で、以下22玉、23角成、同玉、34銀生、同龍、同龍、同玉、35飛以下同手数駒余りで詰みます。
 というわけで2手目は21玉が最善なのですが、これには23香で合駒を尋ねます。何かしら入ると将来的に11に逃げられたときにその駒を打って詰む筋が生じる仕掛け。12玉と合駒せずに頑張ります。
 実はこの4手が序奏で、ここからが主題となります。といってもこの局面では62龍ですぐ詰みそうに見えます。13玉は31馬、14玉、12龍まで。31馬を防ぐ42歩合には22香成、同玉、33銀成として、以下同玉は42龍、11玉は51龍で簡単。進退窮まったように見えますが、ここで42銀合が妙防です。銀合することで22香成、同玉、33銀成、11玉のときの51龍を防いでいます。
 同龍は13玉で届かず、今度は先手が困ったように見えますが、ここで33銀成から22成銀と44銀を消すのが見事な手順。これは44の地点を空ける意味合いで、これを経由して42龍と銀を取り、12龍と捨てる手が成立します。23銀、11玉のときに44馬を用意している仕掛けですね。最後は21玉に31角成と捨てて見事な清涼詰となりました。(11玉、44馬以下でも正解です)
 きめ細かな序奏から秘術を尽くした攻防、着地も完璧で、これをわずか盤面8枚の配置で実現する作者の表現力には脱帽の一手です。当然半期賞、看寿賞を狙えた作品だと思うのですが、実は同じ期に同じ作者で見事な中編作品(下図)が発表されており、最終的にそちらが選ばれました。今の制度でしたら、間違いなく看寿賞を含めて2作受賞になったと思います。
20231001souma2

詰将棋学校好作選3

 更新遅くなりました。この土日は仙台は4年ぶりにストリートジャズフェスティバルが通常開催。天候にもまずまず恵まれて盛り上がりました。当然酒の量も進んでしまい……(汗)


 今日は詰将棋学校好作選です。
20230911wakagi
▲13桂△同香▲12金△同玉
▲45角△34桂▲24桂△23玉
▲12角△14玉▲26桂△同桂
▲25金△同玉▲34角引成△14玉
▲36角まで17手。

 無仕掛け図式ですが、手の付け方が限られており、解図欲がわきます。
 5手目45角がポイントで27まで効かす限定打。これに対して退路を開ける23歩には24桂、22玉に33角という目の覚める妙手があり詰み。34桂中合が最強の抵抗で、これを同角では今度こそ23歩で逃れ。24桂から12角で追うのが正解ですが、14玉、26桂のときに中合の桂が活きる仕掛けが巧い。しかし同桂で26が埋まるため、25金が決め手となって角2枚を活用して詰上がります。
 初形・変化・紛れのバランスが良く、また作意も綺麗に出来ており、好感の持てる作品です。作者はこの時期に短編を中心に活躍されていた実力者。復活して欲しい作家の一人です。


詰将棋学校好作選2(再)

 大曲花火大会のバスツアーに参加してきました。仙台に戻ってきたのは朝の4時で、なかなかの強行日程。今日はほとんど機能していませんでしたが、天気にも恵まれて花火は最高でした。初めて見ましたが、すごいの一語です。60万人くらい集まるのだそうで、運営の皆さんは大変だったろうなと思います。ありがとうございました。

 さて、連載開始しました詰将棋学校好作選ですが、2回目にして早くもポカしてしまいまして、前回紹介して古関氏作はちゃんと半期賞を受賞していました。パラの半期賞掲載号に編集部ミスで載っていなかったのをそのまま信じてしまいました。良く調べれば気づいたはずで、失礼しました。ご指摘いただいたEOG氏に感謝。
 ということで、改めて第2回。今回は長編を紹介します。
20230827nishida
▲32歩成△同飛▲41と△同玉
▲51歩成△31玉▲41と△同玉
▲45香△31玉▲32角成△同玉
▲34飛△33角▲同飛成△同玉
『▲66馬△55と▲51角△32玉
▲42角成△21玉▲43馬△31玉
▲53馬△21玉▲54馬△32飛
▲同馬△同玉▲Ⓐ76馬△65と
▲34飛△33角▲同飛成△同玉』
『▲77馬……▲87馬……△同玉』
『▲88馬……▲98馬……△同玉』
『▲88馬……▲87馬……△同玉』
▲77馬△55と▲51角△32玉
▲42角成△21玉▲43馬△31玉
▲53馬△21玉▲54馬△32飛
▲同馬△同玉▲Ⓑ76馬△65と
▲33歩△21玉▲41飛△31角
▲同飛成△同玉▲75角△同歩
▲41香成△同玉▲85馬△42玉
▲41飛△33玉▲34銀△同玉
▲52馬△23玉▲43飛成△14玉
▲41馬まで133手。
Ⓐ34飛、33角、76馬の手順前後有。
Ⓑ33歩、21玉、41飛、33角、76馬の手順前後有。

 初形で98に置かれている歩を取りに行く馬鋸かな、と想像できるかもしれませんが、その取り方は非常に精緻です。
 まず45香と足場を据えて32飛を入手して、34飛、33角合で33まで引っ張り出して66馬。で、次は76馬としたいのですが、51角、32玉、76馬では65とで詰みません。76馬とするためには32玉型で持駒飛にする必要があります。そのために42角成からもう一枚の角を馬鋸で54まで引っ張ります。31玉には64馬、21玉のときに76馬で2枚馬の効きが発生して詰むので、54馬には32飛合を余儀なくされ、これで目的の76馬を達成できます。馬鋸の1コマずつ動かす原動力に別の馬鋸を使う、複合馬鋸となっているのです!
 作者が用意した仕掛けはこれだけではなくて、98歩を取った後も精巧の一言。76まで同様に戻してきた後で取った歩を33に据えて41飛、31角合、同飛成、同玉の瞬間、75角が刮目の決め手。当時の担当者もこの一手の局面を切り出して載せています。動く将棋盤載せてますので、ぜひ確認ください。同とは32歩成まで、同飛は同馬以下、そして作意の同歩には……ここで手を打った人は相当なマニア。そう、このときのために、序の5手目から7手目で52歩を消去しているのです。
 41香成から飛を入手すればゴールですが、34銀から52馬で気持ち良く、かつ長すぎない纏めも主題と調和しています。ⒶⒷの手順前後はありますが、非常にシンプルな仕組みで複合馬鋸を実現した傑作です。

詰将棋学校好作選2

 次の土曜日、8月19日は詰とうほくです。今回は冬眠蛙の凡ミスで会場が遠目の戦災復興記念館となります。よろしくお願いします。そろそろ暑さも落ち着いているかな?

 前回より始めた学校好作選、作品の質は保証できますが、いつもながら解説下手でつまらなかったらすみません。本日は大学から紹介します。
20230813koseki
▲23桂生△12玉▲11桂成△同玉
▲21と△12玉▲34角成△13玉
▲25桂△14玉▲15歩△同玉
▲13桂成△35桂▲16歩△26玉
▲35馬△16玉▲28桂△同角成
▲46飛△15玉▲27桂△同馬
▲16歩△同馬▲14成桂△同玉
▲16飛△15銀▲同飛△同玉
▲26銀△14玉▲25銀△23玉
▲13馬△33玉▲22馬△43玉
▲32角△42玉▲41角成△同玉
▲31馬まで45手。

 広い初形で狙いどころがつかみにくいですが、実に味のある手順が展開されます。初形では43角をどかして飛成で王手の形を狙い、23桂生から桂を捨てて34角成の形を作ります。13玉に25桂から歩を叩いて13桂成が狙いの筋。これに対して35桂合が妙防で、単純に26玉、35馬、16玉とした場合に比べて、持駒の歩が桂に変わることになるため、16歩と叩けません。しかし28桂から46飛とするのが痛快な手段で同馬は17歩~27桂でぴったり詰みます。
 そこで15玉ですが27桂と活用して打歩詰を打開し、馬を入手します。23角~26飛の筋があるため、銀合が最善でが、その銀を取って足場を作り、取れない13馬が痛快な一手。最後は32角~41角成で詰みあがりました。54香一枚でよく纏まったものと思います。核となるような手はありませんが、手順全体が巧妙で感触が非常によく、また盤面全体が非常によく捌けているのも素晴らしい。ベテランの快作です。

詰将棋学校好作選1

 詰将棋に限った話ではないのですが、だいたいの世界の場合、賞を取った作品というのは何かしら記録に残るものですが、そうでない作品の中にも、見るべき作品はたくさんあるものです。もしかしたらその中には、後世なんらかの価値で評価されるべきものもあるかもしれません。
 ということで、詰将棋パラダイスの代表コーナーである詰将棋学校から、賞に漏れた作品で「これは」という作品を紹介しようかと思います。(冬眠蛙の持っているバックナンバーからになります)
 第1回目はこちらの作品を。
20230730horiuchi
▲42桂成△同飛▲55桂△54玉
▲66桂△64玉▲53角成△同玉
▲43桂生△62玉▲44角成△同桂
▲51龍まで13手。

 53角成に誘われますが、34玉で届きません。少し打ちにくい55桂から66桂で54に足場を作り、53角成~43桂生~44角成が一連の妙手順です。そして何よりその彩りを増すのが、初手42桂成。この手がなくとも後の手順は続けられますが、唯一、最終手だけが成立しません。つまり初手が純粋に最終手だけの伏線手となっているのです。
 桂生の主題をより鮮烈に引き立たせる初手にこそ、作者の心使いが感じられるのはきっと筆者だけではないでしょう。短編として理想的な構成と思います。

 暑い日が続きますね。全国大会の日を思い出してしまうのは冬眠蛙だけではないでしょう。皆さんどうぞ、体調にお気をつけください。