軽趣向好作選125

 最近、令和のコメ騒動みたいなことが起きてますが、構図としては昭和のオイルショックのときと大して変わっていないような気がします。ネット時代になっても、そういうところは変わっていない、ということなのかな。


 今日は軽趣向好作選。似た雰囲気の2作品です。
20240901hirose
▲27龍△46玉▲19角△28歩
▲同角△35玉▲47桂△同飛生
▲24龍△36玉▲48桂△同飛成
▲27龍△35玉▲47桂△同龍
▲36歩△同龍▲24龍△同玉
▲46角まで21手。
 27龍、46玉に19角と遠打。35玉は24龍までですので、28歩と捨合しますが、この時点で「ああ、24龍と捨てて46角までの筋かな」と見当が付きますが、すぐに24龍は36玉で詰みません。一方で36歩は打歩詰になっています。
 落ち着いてまず47桂と打ちます。同飛生とされて打歩詰は打開されませんが、47を塞いでおくのがミソ。これで24龍、36玉に48桂が局面打開の好手です。同飛生は27龍、35玉に今度は17角とする手があります。同香成は26龍まで、46玉は35角、55玉、57龍まで。この57龍を防いで同飛成とするのが最善ですが、再度27龍として47桂と戻せば今度は龍になっているので打歩詰が打開され、36歩と捨てて予定調和の24龍捨てが実現します。
 角遠打から両王手の筋は作例もいくつかあるのですが、飛成らせを入れることで軽趣向に仕立て上げるセンスは流石です。

20240901ueda
▲28桂△同と▲48桂△同角成
▲45銀△同銀25龍△37玉
▲28龍△36玉▲25龍△37玉
▲38歩△同馬▲49桂△同馬
▲28龍△36玉▲48桂△同馬
▲37歩△同馬▲25龍△同玉
▲35馬まで25手。
 初手28桂~48桂とまず桂を連続捨てし、1筋の香の効きを通して45銀が舞台作りの一手。同玉なら34龍以下で詰みます。同銀には取れない25龍が気持ちの良い一手で、37玉に28のと金を取って調子が良いのですが、36玉とされたときに25龍~28龍の千日手になることに気づきます。37歩と打てれば良いのですが生憎二歩。そこで、25龍、37玉に38歩と消し、49桂~28龍~48桂で馬を元の位置に戻せば、37歩が実現して25龍捨てが決まります。
 軽めのテイストですが、タネとなる28と金と48馬を序奏で動かす部分を含めて完璧な表現で、流石上田氏と唸らされます。

詰将棋学校好作選25

 先週台風の心配をしましたが、今週も同じ状況になっていますね。シーズンとはいえ、今年は多い気がします。被害が少なく済むことを祈っています。
 今日は学校好作選。短編です。
20240825tahara
▲56銀△同馬▲77桂△同と
▲57桂△同馬▲54銀△同玉
▲63飛成△同玉▲53金まで11手。
 見える手がたくさんあって迷う形ですが、その中で56銀は意外な手かもしれません。76玉は87金、75玉、84銀、74玉、86桂、85玉、97桂まで。この変化で4枚ある持駒を全部使わなくてはいけないのがポイントで、初手57桂と省略したり、56銀打と欲張ると76玉で逃れます。
 56銀には同馬が最善ですが、77桂と退路封鎖をした上で、57桂と馬を無力化すれば、54銀~63飛成の狙いの妙手順が実現します。

 古典的だなあ、という思いをされた方も多いかもしれませんが、これは本作発表時点でも十分雰囲気的には古典的で、その中でも高評価を得たことに、解答者が詰将棋解図に求めているものを感じますね。

軽趣向好作選124

 昨日は詰とうほく。台風の影響が心配されましたが、ギリギリでそれてなんとか無事開催できました。くるくる展示室の冊子をUraさんからいただき、楽しみました。石川さんや小笠原さんの作品を解いたり、長編の修正について懇談したりであっという間の4時間でした。
 次回は11月23日(土)で申込しています。


 本日は軽趣向好作選です。
20240818tanigawa
▲28飛打△39玉▲38飛△29玉
▲28飛右△19玉▲18飛△29玉
▲28飛左△39玉▲49金△同玉
▲48飛△59玉▲58飛△69玉
▲68飛△59玉▲58飛右△49玉
▲38銀△39玉▲59飛△28玉
▲29銀△27玉▲18銀△26玉
▲29飛△15玉▲16歩△14玉
▲15歩△同玉▲65飛△45歩
▲同飛△14玉▲24飛△13玉
▲14歩△12玉▲23飛成△同玉
▲34金△22玉▲13歩成△同玉
▲43飛成△14玉▲23龍△15玉
▲24龍△16玉▲27龍△15玉
▲16歩△14玉▲24金まで59手。
 入玉形の無防備図式で飛打から入るしかありませんが、すぐ左に追うのではなく、いったん28飛右~18飛で19の桂を消去します。19桂を消去した効果は49金~48飛~58飛としたとき、49玉の変化で明らかになります。48飛右、39玉、28銀、29玉、49飛、18玉で桂がないので19飛までで詰み。
 やむを得ない69玉に68飛とすると、79玉は88銀があり、右に戻ることになります。前が空いている68飛を残して58飛と持駒の銀で今度は上に追います。15玉に65飛を急がず、16歩~15歩と消去しておくのがうまい。玉方も65飛に45歩で抵抗します。24飛に13玉とギリギリ逃れたように見えますが、14歩~23飛成~34金とし、13歩成~43飛成を実現すれば詰みに至ります。
 飛の横追いに不規則な縦追いを組合せ。プロ棋士らしい読み込まれた構成の作品です。

詰将棋学校好作選24

 お盆ですが地震があり台風も来て、落ち着かないですね。被害が少なく済むことを祈っています。

 今日は詰将棋学校好作選です。
20240811kondo
▲13飛△12金▲22金△同玉
▲33飛成△11玉▲22金△同金
▲14香△13飛▲同香生△12香
▲同香成△同金▲22金△同金
▲14香△13角▲同香生△12桂
▲同香成△同金▲31龍△21歩
▲同龍△同玉▲43角△32銀
▲同角成△同玉▲33飛△41玉
▲42歩△51玉▲62銀△同玉
▲74桂△71玉▲83桂△81玉
▲91桂成△71玉▲81成桂△同玉
▲83飛成△91玉▲82龍まで47手。
 
7種合です。5種までは1筋の香の王手で、泉から水が湧くように合駒が発生します。でも、よく見るとわかりやすいものが多いのではないでしょうか。動く将棋盤の方でぜひご確認いただければと思います。
 飛角桂を手にしたところで31龍と手を変えます。43角で33桂から飛打ちの筋を見せると32銀合が最善となり、3×3の狭い範囲で見事7種合が完成しました。
 収束は枠から飛び出しますが、非常に綺麗にまとまっていて、作者が「これで良し」としたのも良く分かります。全体的な雰囲気で、7種合の中でも記憶に残る作品と思っています。

軽趣向好作選123

 来週はお盆ですが、その後17日に詰とうほくが予定されています。夏休み中という方、ぜひ足をお運びください。


 本日は軽趣向好作選です。前回と打って変わって、いかにも、という作品。
20240804tonami
▲37龍△同玉▲33飛△26玉
▲36飛成△17玉▲29桂△同と
▲16龍△28玉▲18龍△37玉
▲38龍△26玉▲36龍△17玉
▲16龍△28玉▲18龍△37玉
▲48龍△26玉▲46龍△17玉
▲19香△同と▲18歩△同と
▲16龍△28玉▲18龍△37玉
▲48龍△26玉▲46龍△17玉
▲16龍△28玉▲29歩△39玉
▲36龍△29玉▲38龍△19玉
▲18龍まで45手。
 大駒4枚ながら王手すら限られている初形。よく見ると37龍捨てから33飛と打ち直し、29桂で18の効きを外せば龍追いが実現します。38香を取った後、もう一度回転して48龍~46龍で更に持駒を補充します。
 香歩を手にしてどうするか、というところで、いったんどかした29と金を19香と呼び戻し、18歩からこれもハガしてしまうのが好手順でした。このと金を消すことで29歩と打つことができ、収束します。33~35手目は38~36龍でも可。配置と手順のバランスが良く、楽しめる作品になっていると思います。

 


詰将棋学校好作選23

 今日は東北楽天の野球の試合を見に行きました。5回までで0-6、しかもパーフェクトに抑えられて、よほど帰ろうかと思ったのですが、よもやのサヨナラ勝ちで盛り上がりました。

 本日はこないだ出勤途上で偶然お会いした方(笑)の作品を紹介。
20240728ogata
▲35銀△23玉▲34銀打△22玉
▲33銀打△11玉▲12歩△同玉
▲23銀成△同玉▲34銀△12玉
▲24桂△11玉▲22銀成△同玉
▲33銀成△11玉▲22成銀△同玉
▲32飛成△11玉▲12龍まで23手。
 上部を押さえているのが斜めの効きのない飛ということもあり、35銀は飛の効きを遮るものの、仕方ないかな、というところですが、23玉に敢えて重く打つ34銀打は少し打ちにくいのではないでしょうか。省略して34銀は14玉、25銀打、15玉とヌルヌル逃げだされます。
 更に22玉に27飛は届きそうにないので、更に重く33銀打とします。31玉は43桂、21玉に27飛と2筋を空けておいた効果が出るので、11玉としますが、12歩と叩いて23銀成~34銀と一枚捨てて軽くしておくのが好手段。24桂と足場を作ると残りの2枚の銀も邪魔になっており、これを軽く捌き捨てれば32飛成が実現します。
 3筋に重く打った3枚の銀が綺麗に跡形もなく消える手順が好評を博しました。自然な流れで実現できており、使用駒種が少ないこともあって、爽やかさを感じる作品です。

軽趣向好作選122

 昨年冬にガス給湯器が壊れて、交換まで1か月半、エライ目にあったのですが、今年は夏突入と同時にエアコンが故障( ;∀;)。気温も出費もアツイ。

 こんなときにはやはり軽趣向ですよねえ(強引)。
20240721ueda
▲36桂△同と左▲25歩△同と
▲34飛生△23玉▲24歩△13玉
▲14歩△同玉▲15歩△同と
▲23歩成△同玉▲32銀生△13玉
▲14歩△同と▲23銀成△同歩
▲25桂△同と▲14歩△22玉
▲31飛成△同玉▲32桂成まで27手。
 33飛成は14玉で届きそうにないので36桂は打ってみたくなる手ですが、同と左とされるとやはり33飛成では打歩詰。そこで25歩と叩いて34飛生と13玉のときの打歩詰を回避する工夫が必要です。なお、25歩に13玉は14歩、同玉、15歩、13玉、12銀成、同玉、24桂以下。23玉とされたときに32銀生としたくなりますが、それではやはり13玉で打歩詰。24歩と叩くことで同とならば14の飛の効きが切れるので32銀生~14歩と打って詰みます。
 13玉が最善ですが、ここで慌てずに14歩~15歩と連打してと金を15に誘導。これで23歩成~32銀生と置き換え、14歩を実現します。最後は23銀成から綺麗にまとまりました。
 上田氏としては手遊びかもしれませんが、細かい手順と完成度に感心させられます。
20240721fukawa
▲26金△同銀▲61角△52香
▲同角成△27玉▲49角△37玉
▲39香△38香▲同香△27玉
▲31香成△37玉▲39香△38香
▲同香△27玉▲32香成△37玉
▲39香△38香▲同香△27玉
▲33香成△37玉▲39香△38歩
▲同香△27玉▲28歩△17玉
▲15飛△同銀▲18歩△26玉
▲36金まで37手。
 26金~61角と72金に狙いを付ける角打に捨合することで金取りを回避するのですが、歩合ではなく香合とするのが正解。この香合は何のためか、というと54に効きを作るため……ではなく、同角成、27玉のときに28香、17玉、15飛、同銀とすると18歩が打歩詰。これが歩合だと18歩が打てるので26玉、36金までです。つまり玉方香先香歩の捨て合です。
 さて、ではそれをどう打開するか、というと27角、37玉、39香で合駒をねだります。これで歩合ならば先ほどの手順で詰み。玉方はここでも香先香歩で38香合としますが、移動して繰り返すことで最終的には歩合を余儀なくされて詰む、という仕掛けです。
 深和氏らしい意欲的な表現ですが、ミステリ好きとしては33~31のどこかに駒を置いて邪魔駒消去できたらなあ、と思ってしまいます。作者も試してみたのかもしれませんが。

全国大会in甲府と編集長の長編

 今年もささやかながらお手伝いで参加しました。ちなみに当日よりも前日以前の方がはるかに準備が大変で、それには冬眠蛙はほとんど貢献できておりません。他の幹事の皆様、また現地で仕切っていただいた堀口さんには本当に頭が下がります。無事に開催できて、本当に良かったです。
 大会では休憩時間もずっと記念詰将棋に苦吟して、ほとんどコミュニケーションが取れませんでしたが、懇親会はおかげさまで楽しませてもらいました。飲み物のオーダーに追われ、せっかく大橋さんの近くの席だったのにあまりお話しが出来ず残念。でも久しぶりにあんこうさんと昔話や詰将棋に対する思いについてお話しできましたし、何人かの方から「冬眠日記見てます」と言ってもらえました。ssさんからは「紹介してもらえると嬉しいです」とありがたいお言葉も。嬉しい限りです。
 そんな中でひとつ今回嬉しかったのが、編集長と長編「マリー」のお話が出来たこと。「よう知ってたなあ」と言われましたが、編集長の短編・中編を見慣れているパラ会員の皆さんなら、下の作品が編集長作だ、と言われても「え!」となるのではないでしょうか。


20240715mizukami


 「いや、それはもう苦労したよ」と懐かしそうに語っておられました。「収束がちょっと残念でねえ」というお話で、実はちょっと5手前から別詰のキズがありますが、なんといっても趣向によらずにこれだけの手順を捻りだしたことに、秘めたる情熱を感じるばかりです。ぜひ解いて……と言いたいところですが、なかなか大変。
 そんなときにはググるのが一番、ということで、その場でも鑑賞できないか、と探してみたら、ちゃんと詳細な解説つきでつみき書店さんに載っていました。スマホの小さい画面でしたがその場で鑑賞。一緒に見たあんこうさんも「これはスゴイ」とおっしゃっておられました。ぜひコチラをクリックして、作者のほとばしる情熱を感じてください。スマホだとちょっと見にくいので、こちらでも動く盤面を載せておきます。多分見ただけでも熱さを感じてもらえると思います。
 ちなみになぜ詰将棋学校好作選で触れなかったのか、といえば、もちろん本作が半期賞を受賞しているからです。作者の言葉とか当時なかったんですよねえ。そういう意味でも、今回聞けて良かったです。


 次回ももちろん参加したいと思っています。また皆さんお会いしましょう!


詰将棋学校好作選22

 詰将棋学校好作選は半期賞選考時に担当者の方がコメント言及した作品を選んでます。……と言い訳した上で。

20240707ichishima
▲22金△同銀▲34香△33銀
▲同香成△同玉▲42角成△34玉
▲44銀成△同玉▲26角△同香
▲45銀△35玉▲36銀上△46玉
▲24馬まで17手。
 初手いきなり金を手放すのがやりにくい一手。34香が継続手で、33歩合等では42銀成、21玉、22角成、同玉、31角で早詰。角銀は品切れで、31に効かす33飛合は42銀成、21玉、32角、12玉、22角成、同玉、33香成、同玉、43飛以下で同手数駒余りです。
 質駒を逃がす33銀移動合を食いちぎり、44銀成と捨てて26角が狙いの限定打。香を跳ね上げることで、最終手の24馬が成立します。
 純逆算で、銀4枚使っての序奏は賛否分かれるところでしょう。実は昔は「ちょっと無理あるな」と思っていた逆算でしたが、今見てみるとちょっとした意外性と適度な難易度で、比較的好ましいコになりました。将来作品集を編むときには必ず入れたいと思います。

 

軽趣向好作選121

 昨日は来仙された角さんと懇親。年に1度の楽しみです。詰とうほくとタイミング合わないんですよねえ。惜しいところです。
20240630serita
▲37銀打△25玉▲26銀引△16玉
▲17銀△25玉▲16銀△同玉
▲45銀△25玉▲26銀△16玉
▲17銀△25玉▲36銀△15玉
▲26銀△16玉▲25銀左△同角
▲17銀△15玉▲16飛△同角
▲26銀まで25手。
 初手はほぼこの一手で、25玉に26銀上は36玉と戻られるので26銀引~17銀もこう指すところですが、25玉の局面でどちらの銀を26に上げても千日手模様。これを46銀を使ってうまく打開します。16銀と思い切って捨てて45銀とまず角の道を閉ざしつつ開き王手。26に合駒が効きそうですが、全部取って16飛と捨て、取った駒を打って詰みます。25玉とするしかないですが、そこで36銀と引く手を急がず、26銀~17銀と銀を置きなおすのが好手順。17銀型にして36銀と引くことで、15玉とする一手となり、26銀~25銀左とすることで25の逃げ道を塞ぐことが出来ます。最後は16飛と捨てて26銀まで、綺麗に収束。
 わずかな舞台装置の上を3枚の銀がチョウのように舞う美しい趣向で、この年のデパート年間優秀作を受賞した傑作です。

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